そして、さらに驚かされること。
いま、日本国内ではマスクの品不足が続いている。東京の新宿区内の商店街にあるドラッグストアでは、朝10時の開店前から数人がシャッターの前に並んでいて、開店と同時にマスクを買いあさっていく。多くが中国人だ。
彼ら彼女らは口々に、「自分のためだけじゃない。家族や友人のために買う」という。そう言われると、店員も文句は言えない。
その中国人たちは、ドラッグストアの隣にある、おそらくは東京オリンピックを見越して最近開業したばかりのコンパクトなホテルに帰っていく。
新型肺炎の影響で、中国人旅行客のキャンセルが相次いで、旅行業界からは悲鳴が上がっている。だが、いまでも着実に訪日する中国人はいる。
春節が終わっても、武漢以外も厳戒態勢
中国本土では、2月10日までに感染者が4万人を超えた。それも発生源とされる湖北省武漢市ばかりにとどまるのではない。
その隣の湖南省に住む旧知の中国人と電話で話したところでは、湖南省だけでも約400人以上が感染して入院しているという。中央政府から外出も控えるように指示されている。
黄海に突き出た山東省でも感染者は確認され、企業活動が再開した北京でも人通りは少なく、2月初頭からは外食が禁止された。
いってみれば、中国全土が”感染地域”となっている。その感染地域の住民が日本にやって来て、商店街に宿泊して、マスクを買いためて、また感染地域へ帰っていく。
いまだに日本人が気づかないだけで、すでに日本人の間に感染者がいてもおかしくはない状況だ。
その日本人が高熱を出したとしよう。最初は一般外来の医療機関を受診するはずだ。そうすると、医療機関から感染が拡大していくことが懸念される。その医療機関でも、「マスクが足りない」と悲鳴が上がっている。SARSでも医療関係者の感染は約2割と、最も多かった。
そうした状況を鑑みながら、クルーズ船から学ぶのであれば、公共交通機関による長時間の移動にも着目する必要がある。
例えば、日本の大動脈ともいえる新幹線。感染者が1人いるだけでも、コロナウイルスがまき散らされる。日本人で最初に感染が確認された男性は、バスの運転手で新型コロナウイルスが発生した中国湖南省武漢のツアー客を乗せていた。
手すりや座席などに付着したウイルスに触れて体内に取り込んだ接触感染と見られる。新幹線であればさらに人の乗り降りは多く、また長時間を車内で過ごすことになる。弁当を食べようものなら、より感染のリスクは高くなる。
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