「ドクターストップ」はどこまで強制力があるか 高校生の選手生命をつぶさずに済んだ事例も
ドクターストップは、ラグビーやボクシングのように、規約の中に明記されていれば、必ず従わなければならないものとしての強制力をもちます。
しかし、そのようなはっきりとした規定がない競技では、そこまでの強制力がないため、ドクターの宣告を無視して選手やチームの希望によりプレーを強行するといったケースも出てきます。その結果、選手生命を縮めてしまったり、生涯にわたる障害が残ってしまったりすることがあれば、スポーツドクターにとってとても悲しいことです。
ドクターストップはアマチュアスポーツにも不可欠
プロスポーツに限らず、安全にスポーツを行うためにドクターストップが必要なのは、一般や学生のスポーツでも同じです。例えば、高校サッカーの実情を挙げると、高校のサッカー部でチームドクターのいるチームはほとんどないのが現状です。
そこで日本サッカー協会は、全国大会に出場が決まった全チームを対象として、試合前の健康チェックを行う取り組みをしました。このとき、ある高校3年生の選手が、足首を骨折して手術後、まだ金具が入った状態であるにもかかわらず、レギュラーとして登録される可能性が出てきました。結局、試合前の健康チェックでドクターストップがかかり、本人も納得し、おかげでこの選手の将来をつぶさずに済みました。
多くの参加者がいる市民マラソンでも、健康チェックが重要です。心疾患による突然死などの悲劇を防止するために、参加者に対する事前の健康チェックを導入するところが増えています。ランナーの皆さんには、できれば安静時心電図だけでなく、トレッドミルと呼ばれる運動負荷心電図検査を受けておくことをお勧めします。これによって、生命の危険につながる、労作時にだけ起こる特殊な不整脈を発見することができるからです。
以上、お話ししてきたように、ドクターストップは、スポーツ選手の命と選手生命とを守るために不可欠です。そして、競技中だけでなく、競技に臨む前のドクターストップもたいへん重要です。今後、競技スポーツだけでなく、健康スポーツの現場にも会場ドクターの活躍の場が広がることが望まれます。
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