「ドクターストップ」はどこまで強制力があるか

高校生の選手生命をつぶさずに済んだ事例も

日本においてプロボクシング競技を統括している機関である、一般財団法人日本ボクシングコミッション(JBC)のルールには、ボクサーの健康を管理するコミッションドクターに関する規定が定められています。コミッションドクターは、スポーツ医学もしくはボクシング医学に精通した医師に委嘱され、その診断のみが公式なものとされます。

コミッションドクターの職務としては、

・試合中は、リングサイドの最前列に着席し、レフェリーの要請があれば負傷ボクサーの診断の結果を報告し、万一緊急事態が起こった場合には応急の処置をとる
・試合中、ボクサーに試合を続行させることが適切でないと判断した場合、レフェリーおよびJBCに試合中止を勧告する

ことが、明記されています。

コミッションドクターのそのほかの役割

そのほかにコミッションドクターは、ボクサーの定期・臨時の診断、試合前日の公式計量への立ち会いとボクサーの身体検査、試合終了後のボクサーの試合診断報告書の提出などの任務も行っています。

また、勝敗を左右するテクニカルノックアウト(TKO)の判定にも、コミッションドクターが関わります。「レフェリーが選手の安全管理のため試合を中断し、コミッションドクターが医学的見地から試合停止をレフェリーに進言し、レフェリーがその判断を受け入れて試合を停止したとき」に、TKOが決まるのです。

ボクシングに限らずどの種目でも、時に極限下の状態にある選手たちは痛みを感じなかったり、正常な判断ができなくなっていたりすることがあります。また、脳振とうでは安静を要するレベルにあっても、一見しただけでは正常に見える場合もあります。そのため、試合ドクターが医学的見地から宣告したドクターストップが、その場の選手やチームの監督やスタッフに理解してもらえないということも起こりうるのです。

もう一方で、ドクターストップを告げる立場にあるのは、チームに所属する「チームドクター」です。こちらの場合、その選手の選手生命やチームの戦力を考えて判断を下すことも多いでしょう。その試合の勝敗が、選手やチームの成績に関わる大事なものであることをよく知るチームドクターほど、ドクターストップの宣告はためらわれるものです。しかし、最終的にはチームドクターは医学的な診断にもとづき、勇気をもってドクターストップをかけるのです。

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