「ドクターストップ」はどこまで強制力があるか 高校生の選手生命をつぶさずに済んだ事例も
試合や大会などのスポーツ競技の現場では、極限までトレーニングを積み重ねてきた選手たちが、頂点を目指して全力で戦っています。そんな大舞台で、選手自身の大事な「命」はもちろん、現役選手の「選手生命」を守ることは、試合会場にいる「会場ドクター」に課せられた重要な使命です。
会場ドクターは、ラグビーではマッチドクター、ボクシングではリングドクターなどとも呼ばれます。会場ドクターは、選手たちがどんな状況でケガをしたかを把握できるように、試合をすぐそばで観戦しています。もし、選手がケガにより出血したり、転倒や接触により強く頭を打ったりすれば、会場ドクターが試合の一時中断を要請して、選手の試合続行が可能かどうかを判断します。
中でも、脳振とうや脱水による意識障害は、とても危険な兆候です。例えばラグビーでは、ビデオ判定システムも導入されて、会場ドクターが脳振とうを起こしている選手をすぐにプレーから離れさせて診断していることは、すでに以前の連載で紹介したとおりです。
その場での医学判定が必要なスポーツ、ボクシング
ラグビーのほかに、その場で重要な医学的判断が必要なスポーツといえば、ボクシングが思い浮かぶでしょう。ボクシングの試合を見ていると、目の上が切れて出血した選手が、ドクターチェックを受けるために試合が中断される場面がよく見られます。このときリングに上がっている医師が、リングサイドに控えていたリングドクターです。
リングドクターは、パンチによるケガの重症度や脳に異常がないかどうかを診断し、ドクターストップを要するかの判断をします。万が一、脳に急性硬膜外血腫などの損傷があれば、すぐに病院で治療しないと選手が死亡する危険もあるのです。