「不快な広告」と「愛される広告」の決定的な差 「伊勢半の顔採用」が炎上しなかった理由

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これまで「スネ続けて15年の息子、全く会話が無かった母親に謝りに行く_PR」など人気広告記事を多数作ってきたヨッピー氏に、なぜ広告であることを一切隠さないのか尋ねてみた。

「記事広告だと規約上、ヤフーに配信できないですよね。だから"広告って言っちゃうとヤフーに配信できないので黙っていよう"というインセンティブが働き、ステマになってしまう。そこの構造的な問題もあるし、そもそも広告って基本的に嫌われ者なので【広告】って書かないほうが作る側としてはラクなんですよ。

僕は広告記事をこれまで多数作ってきましたが、経験上、広告が入るからこそ予算をかけて派手なことができるんだと思います。普段できないことも、広告の予算があるからできるわけです。

広告の予算を使って、面白い記事を作れば広告主、読者、作り手の3者でWIN-WINの関係を作れます。でもそれって大変なんですよ。手間もかかりますし。その手間をかけずに予算だけもらって記事を出せば、ラクだしお得なので、心が弱かったらそっちの安易な方向に流れてしまうんじゃないかなあ。でも、プライドを持って堂々と広告だと言い切った上で面白い記事を出せばいい」

ヨッピー氏は広告だって面白くあるべきだと考えているし、ネット上で大きな話題にすることこそお金を投下する意味があると語る。そうした考えに至ったのは、LINEの谷口マサト氏とデイリーポータルZの林雄司氏という2人の先駆者がいたからだという。

「谷口さんや林さんが作った記事広告を見て『広告でこんなことやっていいんだ。しかもこんなにバズってるんだ』と思い、僕もそのやり方を参考にしたところがあります。面白くて拡散して、しかも炎上しない広告記事ってクライアントも喜びますしね。この方向性が正解ルートだなと思っていますよ。受け手も作り手も、お金を払う側も丸く収まる方向ってなんだろなって考えたら自然とこうなった形です。隠してやったら読者を騙すことになりますしね」

広告は万人に愛されなければいけないという考えを最近、別の場所でも実感した。それはJAA(日本アドバタイザーズ協会)とJAAA(日本広告業協会)の共催するイベントだった。特に琴線に触れたのが、2人の若手クリエイターが発表した新聞広告についてだ。いずれの企画も約5万のRTと14万の「いいね」がつくなど、見る人の心をつかむ見事な設計であり、最近の言葉でいえば「エモい」内容になっていた。

伊勢半の「顔採用」が炎上しなかった理由

電通の吉川隼太氏は、化粧品メーカー・伊勢半の「顔採用」というキャンペーンを企画した。これは、「私らしさを、愛せる人へ」というブランドビジョンが伝わるブランディング・コミュニケーションを求められた際の解決策として作った企画だ。

吉川氏は社会的に関心の高いテーマと同社のビジョンを結びつけることが最大の話題化につながると考えた。世の中の人がメイクに関して「私らしさ」を我慢している瞬間こそ、画一的な就職活動と捉え、「顔採用」というキャッチーな、一瞬反発を覚えるような言葉を使った。

だが、新聞広告のボディーコピーにはのっけから「もちろん顔のつくりで判断するわけでも、メイクの技術を問うわけでもありません。好きなメイクできてもらう、という採用です」と結論を書く。


しかも応募者は男女問わず、全員を「顔採用」で採用するわけではなく、実験的にデジタルマーケティング系の職種を採用する、という点も共感増幅・炎上回避の技だった。

【2020年2月20日19時18分追記】初出時、採用方針の記述に誤りがありましたので上記のように修正しました。

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