新型肺炎、投資家は「楽観」「悲観」どちらに乗る? 中国の1~3月のGDP大幅減速は避けられない

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ただ、先に述べたとおり、新型コロナウイルスについては致死率などについてはっきりしておらず、幅広いシナリオが想定できる。もっとも楽観的な想定は、震源地となった武漢の経済封鎖で、中国の他の地域や世界への拡散が防がれる。そして、新型コロナウイルスの致死率がSARSなどより低い、あるいはこれまでのインフルエンザと同様であることが判明する。また、タイ保健省は、新型ウイルスの症状を改善させる事例を発見した、など最新医療によるウイルス克服も期待される。そうなれば、中国での経済活動の停止が1カ月以内で収まり、同国の経済活動は早期に正常化するだろう。

一方、悲観シナリオを想定すると、武漢以外の中国、そして日本を含めた諸外国での感染者が増える。春節休暇を前に多くの人が武漢を離れていたとみられ、感染者の広がりは十分想定できる。さらなる問題は、SARSなどよりも低いと見なされている新型コロナウイルスの致死率が、SARSなどと同様に上昇することである。このシナリオでは、中国は、ウイルス拡散抑制のために、広範囲な経済活動抑制策を、例えば3カ月以上など長期に及ぶことを余儀なくされるだろう。

東京五輪までに収束する可能性は低いとの見解も

この場合は、中国経済が大きく落ち込むだけではなく、世界経済全体にも相応に影響が及ぶ。そして、中国経済との関係が深い、日本を含めたアジア諸国には特に甚大なダメージが及ぶだろう。なお、感染症対策の専門家である東北大学の押谷仁教授は、新型ウイルスによる感染症がいつどのような形で終わるかは見通せないが、東京オリンピックまでに収束する可能性は低い、との見解を示している。

上記の楽観シナリオと悲観シナリオへの市場心理の揺れ動く状況が、目先は続くと思われる。どちらのシナリオにベットするか、現状は極めて難しい。だが、それを判断するためには、致死率とともに中国における死亡者数の動向が最も重要と考える。死亡者数が過去数日のペースから増えなければ、今後、新型コロナウイルスに対する金融市場の懸念は和らいでいくだろう。

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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