そして、今回の新型肺炎は、SARS(重症急性呼吸器症候群)と同様の性質を持つコロナウイルスとされているが、致死率、感染メカニズム、潜伏期間などについては、はっきりと判明していない。致死率は2%前後でSARSより低いとされているが、SARSは4%前後だった当初の致死率が上昇した経緯がある。
一方、今回の震源地である武漢での新型ウイルスの致死率は2月3日時点で5%前後となっているが、これは武漢においては、大混乱となっている医療機関のキャパシティの問題などで重症の患者のみが把握され、致死率が高く計上されているとの専門家の見方がある。
なお、武漢以外の湖北省の致死率は2月3日時点で、2%以下のままである。いずれにせよ、こうした中国当局発表の数字がどの程度正確であるかを含め、依然判明していないことが多い。感染者がどの程度拡大するかよりも、新型ウイルスの致死率がどの程度かで、今後想定されるシナリオは大きく異なると筆者は考えている。
中国の1~3月期GDP大幅低下は避けられず
今回の新型コロナウイルス拡散防止策として、中国では旅行、交通機関の停止、広範囲なサービス業の営業見合わせなど、広範囲に経済活動が事実上停止するに至っている。2003年のSARSの時期にも、短期間だが同様の経済抑制政策が実現され、当時の4~6月期の国内総生産(GDP)成長率は、前期から約2%ポイント低下した。少なくとも同様に、中国経済が一時的に落ち込むことは避けられないため、2019年までの6%経済成長が、1~3月には4%前後まで低下するというのは、ほぼコンセンサスになりつつある。
今回、1カ月程度の経済活動の停止であれば、SARSの時と同様に、中国そしてグローバル経済への影響は軽微で世界経済全体への悪影響はほぼ観測されないとみられる。このため、株式市場を含めた金融市場への影響も極めて軽微だろう。
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