幻のドリンク「ネーポン」を甦らせた41歳の執念 一度は消えたが試作に試作を重ねて再現した

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「だったら今あるネーポンをインターネットで売ってみようってことになりました。インターネットで販売するのは、服屋の仕事で慣れていましたからできると思いました」

ネーポンを単品で売るのではなく、同社の製品である「ミスパレード」、冷やし飴などとセットにして『ネーポンセット』として3000円程度で販売した。

本来、空き瓶は回収して再利用していたが、もう廃業する予定だったから、瓶もふくめて販売してしまった。

「テレビでネーポンを知っている人も多かったですから結構売れました。全国に発送しましたね。ただもちろん倒産を食い止めるほどではなかったです。1セット売れて僕の儲けは500円くらいですから、僕自身もそんなに儲かることもなかったです」

結局、会社がなくなるまで2年間、販売の手伝いをした。

レシピと商標を譲り受ける

会社を辞めるとき、おばちゃんは

「そんなにネーポン好きやったら、レシピも教えるからあんたが作り」

と言ってくれた。そしてネーポンの特徴的な商標も譲ってくれた。

「レシピと商標を譲り受けたときは

『僕がネーポンを作るぞ!!』

ってやる気満々でした。ただ、もらったレシピを調べてみると、使用している香料をつくっている会社が倒産していました」

ほかの香料を扱う会社に電話して、なんとか足りない香料を取り寄せようとしたが、なかなかそろえることはできなかった。

いろいろ当たっているうちに、徐々に熱意は冷めていった。

「やっている途中で、もういいかな?って気持ちになってしまいました。当時の僕の熱意ではそれくらいが限界だったんですね」

アパレル会社をクビになった後は、派遣の警備の仕事をしたり、肉体労働をしたりして食いつないだ。

そうこうしているうちに、商標を受け継いでから10年が経とうとしていた。

「商標の更新手続きにはお金がかかるので、ネーポンを作らなければもったいないな、と思いました。2017年に商標が切れるので、そこからまたやる気を出して作ることにしました」

ジュースを作るには、何度も試作品を作らなければいけない。試作品を作るのにはお金がかかる。

「探していると、タダで何度でも試作品を作ってもらえる会社を見つけました。その会社なら、お金の心配をせずに味を近づけることができます。

そういう業務用飲料会社って、とりあえず最初の1つは適当に印象でジュースを作って送ってくるんですよ。今回も最初はパッションフルーツが入ってる、トロピカルな試作品が送られてきました」

その試作品から、ネーポンの味に近づけていかなければならない。

ただ、おばちゃんから譲り受けたレシピにあった原材料のすべてをそろえることができない。しかもなんとかレシピに寄せて制作したところ、あまりおいしくない試作品ができてしまった。

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