幻のドリンク「ネーポン」を甦らせた41歳の執念 一度は消えたが試作に試作を重ねて再現した

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そうこうしているうちに、徐々に注目されるようになってきた。興味を持った新聞やネットニュース、テレビで取り上げられるたびに、注文数も増えてきた。

「ありがたいことに3カ月ほどで最初に作った300本は売り切りました。とりあえず『作ったけど売れない』という状態になることは回避できることがわかったので、その後は安心して作れるようになりました。ただ、まだまだ稼げていません」

現在ネーポンシロップは12本入りのセットを1万円程度で販売している。2019年内に1500本程度販売したが、田中さんの儲けは50万円程度にしかなっていない。

「思ったより売れている」のが逆に大変

「『赤字ではなく、思ったより売れている』というのが逆に大変なんです。梱包と配送にかなり時間が取られるので、ほかのバイトをする余裕がなくなります。正直売れないほうが生活が楽なくらいです。思ったよりは売れているけど、それでも専業で食べていけるほど儲かっていないというのが現状です。

ただそれでもやっぱり、売れないよりは、売れてくれるほうがうれしいです。もしも売れなくても、文化を消したくないので続けていこうと思っていました。1年間続けてみて、ネーポンの需要はあるということはわかりました」

これからは売り方を変える転換期に来ていると思った。

お土産屋さんに置いてもらう、飲食店で定期的に購入してもらう、など売り上げを伸ばす作戦を考える日々が続いている。

ネーポンシロップの販売促進用のポスター

「シロップを割って飲む、というのがお子さんに人気らしいんです。親御さんから繰り返し注文がきています。そういう新しいお客さんがドンドンついてほしいですね」

話を伺いつつ、喫茶店のママにネーポンを作ってもらった。とてもスッキリとした爽やかな味がした。焼酎などのお酒に割っても合うと思う。

懐古趣味の人だけでなく、新たなユーザーがつく可能性は高いだろうと思った。

田中さんは、過去のことを話すときは終始自信なさげで口ごもることも多かったのだが、話題がネーポンに移ってからは俄然しっかりとした口調になった。

ネーポンという清涼飲料水をただの興味本位ではなく、有限会社ツルヤ食料品研究所や、そこのおばちゃんごと愛しているんだな、という優しい気持ちも伝わってきた。

またいつの日か、ネーポンが大阪の街で自然に飲まれる日が来るかもしれないなと思った。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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