マウント・ゴックス、既存の決済システムに依存 「ビットコイン天国」だった日本
「日本はビットコイン天国」
ビットコインはどのような法的な位置付けにあり、何が違法行為になるのか。取引業者はどのような規制の下で監視されるのか。日本政府は3月7日に公表した国会への答弁書で一応の見解を示したが、それまでこうした点が不明のまま取引が行われていた。
米国では、昨年3月、財務省傘下でマーロンダリングを所管する法執行機関FinCENが仮想通貨の取引指針を公表するなどすでに具体的な対応をとっており、米金融機関にあるマウントゴックスの口座を凍結する判断は、この指針がもとになった。
これに対し、日本は行政上の監督責任も明確にはなっていない。今月5日、消費者保護の法整備を議論した自民党のIT戦略特命委員会には金融庁や消費者庁など6省庁と日銀が参加したが、裏返せば今回の破たんを所管する役所が決まっていない実態を示す結果ともなった。
「ビットコイン天国」(金融関係者)。明確な規制も担当官庁もはっきりしない日本の現状について、こう皮肉る声も広がっている。
2月28日に東京地裁に民事再生法の適用を申請したマウント・ゴックスは、3月12日になって、米国の裁判所に連邦破産法の適用を申請し、認められた。経営再建のためには、資産を保全し、米国内の資産が差し押さえらえる事態を避ける必要があるためだとしている。
カルプレス代表は東京地裁での記者会見で、同社と顧客分の計85万ビットコイン(時価で約560億円)のほぼすべてが失われたほか、預金残高が最大28億円不足していると説明した。さらに、それらが不正アクセスで盗まれた可能性もあるとしたが、金融関係者の間では、「ビットコインはともかく、銀行口座にある預金残高が(ハッカーによる攻撃で)盗まれることはありえない」という疑念の声が出ている。
外部からの不正行為で資金が抜きとられた可能性がないのに預金残高が不足しているとすれば、預かった顧客資産の管理方法に対する疑念が生じる。顧客資産と自己資産を分けて管理する「分別管理」は、信託銀行や証券会社など顧客資産を預かる業態では法令上の義務となっている。マウント・ゴックスの資金管理の実態は明らかになっていないが、金融関係者の間では、同社が「分別管理」を十分に実行していなかった可能性を指摘する見方もあり、同社の説明責任が問われそうだ。
(布施太郎、Sophie Knight 編集:田巻一彦、北松克朗)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら