店舗閉鎖も、小売り各社襲う新型肺炎ショック 消費マインド悪化、国内の影響本格化は2月か

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日本国内でも新型肺炎に感染した患者が確認されており、小売各社は訪日外国人客の減少や心理的影響による売り上げの落ち込みを心配している。特に、百貨店は免税売上高のうち、約8割が中国人観光客向けの売り上げとされており、深刻な影響が出る可能性がある。

三越伊勢丹ホールディングスは「今のところ、大きな影響は出ていない」(同社広報)という。団体旅行に制限がかかる前に、既に来日している中国人が多かったようだ。

春節後の”落ち込み”に懸念

春節期間の売り上げを2019年と2020年の同期間で比較すると、新宿、日本橋、銀座の旗艦3店では前年比でマイナス数%程度にとどまり、全国店舗ではほぼ前年並みだった(ともに1月30日時点)。

三越伊勢丹ホールディングスの新宿、日本橋、銀座の旗艦3店は微減にとどまった(編集部撮影)

大丸松坂屋百貨店を擁するJ.フロント リテイリングも「1月の免税売上高は30日までで前年比3割増」(広報)。銀座に基幹店を構える松屋も「春節ピークとなる1月下旬の1週間の販売動向は、前年比で1.5倍程度伸びている」(IR担当)と説明する。

ただ、春節期間が終了し、団体客渡航を禁止した影響が出てくる2月は、中国人観光客の需要が一気に落ち込みそうだ。さらに、国内客についても「消費マインドにも悪影響を与えている。既にシニアや家族連れの客足が鈍くなっている」と老舗百貨店の中堅社員は語る。

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ある中堅アパレルの幹部は、「2002年後半から2003年にかけて流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)は、およそ8カ月影響が続いた。今回の新型コロナウイルスも、半年くらいマイナス影響が続くのではないか。中国に限らず、日本国内でも人が集まるところに買い物に行くのを控える動きが出るので、じわりと影響が出てくるはず」と先行きを危ぶむ。

小売り各社に新型肺炎の波紋が広がっていくのは、これからになりそうだ。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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