ベトナムが「福島化」する恐れはあるか 日本とベトナムの深い関係
10年間で3倍増の電力消費
ベトナム国営電気公社(EVN)によると、ベトナム国内の電力消費量は2005年からの5年間ですでに倍増し、2015年には3倍以上に達するとの見通しだ。急速な工業化に加え、エアコンなど民生分野の電力消費もうなぎ上り。毎年10%を超える消費の伸びは、今後も続くと予想され、これはほかの東南アジアの国々と比べても突出した数字である。
しかし、旺盛な電力需要に電力インフラが追いつかないのがベトナムの現実である。格段に改善されてはいるが、今も「停電」(「計画停電」を含めて)は日常茶飯に起こるこの国の“名物”。電気料金の値上げも頻繁に行われ、ベトナム進出企業にとって、電力の問題は経営上の大きな課題となっている。
現在のベトナムの発電実績(2012年)は、水力43.9%、石炭火力34.2%、ガスと石油火力が合わせて20%である。火力の割合が近年高まったものの、水力が長らく5割を超えてこの国の電力供給を支えてきた。世界的には水力発電は総発電量の約15%(日本は約7%)。ベトナムでの依存度はかなりの高さだ。
ベトナムは豊富な水資源に恵まれている一方、降水は雨季に集中し、年によって量も変動する。異常気象で渇水となればすぐさま「停電」。天候に左右される水力発電に頼るベトナムは、そもそも電力供給が不安定にならざるをえない。
ベトナムでは5年ごとに国家電力開発マスタープラン(PDP)が作られている。2011年発表のPDP7では、電力の安定確保を目指し、電源の多様化を掲げている。将来的には水力を大幅に減らし、火力を増強。風力など再生可能エネルギーを積極的に導入する計画である。
電力不足の解決にマスタープランの遂行はもちろん重要。でも、電源確保への課題はいくつも残されている。
火力発電の燃料は、国産の石炭中心から輸入石油に一部転換するが、そうなると高い燃料価格が経済的な負担になってくる。自然エネルギーも開発はまだ不透明で、水力に至っては国内の適地は限られ、多くの発電量を望める大規模開発は難しい。
そこで浮かび上がってきたのが原子力発電だ。ベトナムの電力不足解消の切り札として、原発に期待する意見はベトナム国内にも少なくない。ベトナム政府は総発電量に占める原子力の割合を2030年に8%、さらに2050年までには20%にするという。
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