風力発電の普及を後押しする新保険が登場 損保ジャパン、日本興亜が事故再発防止の特約開発

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風力発電は故障が多いのが難点。保険会社にとっても商品設計の難しい分野だった(撮影:今井康一)

 損害保険大手NKSJグループの損害保険ジャパンと日本興亜損害保険は、新たに開発した保険商品を通じて、風力発電事業の普及を後押しする。

両社は2月1日付けで「事故再発防止費用補償特約」を付帯した火災保険を発売。風力発電事業での事故発生に伴う従来からの保険金支払いだけでなく、新たな事故を防ぐためのコンサルティングサービスを特約を通じて提供する。こうした特約を付けるのは業界初という。

2020年までに4倍以上の発電量に

新規案件への建設費補助の打ち切りで大きく落ち込んだ風力発電の建設は、2012年7月の再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度導入を受けて、再び成長過程に入っている。一般社団法人日本風力発電協会の「自然エネルギー白書(風力編)」(2013年3月)によれば、風力発電の導入目標量は2020年度に約1100万キロワット以上とされている。2012年度推定の265万キロワットの4倍以上の規模に達し、原子力発電所約10基分に相当する。

そうした中で、普及を進めるうえでの課題となっているのが、事故発生の防止だ。落雷やメンテナンス不良などによる破損事故は、いったん起きると数千万円から億円単位もの費用がかさむ。反面、事故を減らせれば、設備利用率の向上を通じて、収支改善にもつながる。

発電事業者のこうした事故防止努力を後押しするのが、両社が発売した新たな火災保険に付帯された特約だ。事故原因の調査と再発防止のための点検費用として、1事故について100万円を限度に保険金を支払う(保険期間を通じた支払いは300万円が限度)。合わせて、グループ子会社である損保ジャパン日本興亜リスクマネジメント社が、風力発電のメンテナンス専門業者や学識経験者などと連携して適切なアドバイスを行う。

損保会社にとっても、事故の防止は風力発電事業向け火災保険の収支改善や保険引き受けの拡大につながるメリットがある。損保ジャパン・企業商品業務部財産保険グループの山中崇嗣担当課長は「新たな保険商品を通じて、再生可能エネルギーの普及を後押ししていきたい」と意気込む。損保会社、発電事業者の双方にとってウィン-ウィンの保険商品になるだろうか。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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