ベトナムが「福島化」する恐れはあるか 日本とベトナムの深い関係

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中南部は一大発電エリアに

原発計画に先立って、ベトナム中南部では新たな電源開発が盛んだ。

ニントアン省の南隣ビントアン省では、次々と火力発電所の建設が進められている。作られているのは海沿いのビンタン村。数カ所に点在する発電所群で、このうちビンタン第2火力発電所が今年1月に稼働し、最初の電力供給を開始した。

ビンタン火力発電所群は第1~第4発電所まで計画され、すべてが完成すると国内最大規模となる。南部の電力供給不足を回避する重要なプロジェクトとして期待されている。

同省ではベトナム初となる風力発電所も一昨年に本格稼働した。ビンタン第2火力発電所からもほど近い海を望むなだらかな丘。そこに20基のタービン風車が立ち並んでいる。

世界銀行からは、「ベトナムは東南アジアで風力発電のもっとも大きなポテンシャルを有する国」との調査結果も出ている。地上60~80メートルに秒速6~7メートルの風。風力発電に最適な環境が、ニントアン省とビントアン省には手つかずのまま広大に存在しているのである。

だが、火力も風力も、ここで作られる電気はほぼ地元には来ない。

「電気は頭の上を通って行くだけです。ここにはぜんぜん来ない」(風力発電タービン下の住民)。

「火力発電所ができたって? みんなサイゴンで使うためでしょ。停電は相変わらずだよ」(火力発電所近くの商店主)。

そもそも人口の少ないこの土地では、最低限の電力供給で十分なはず。ここまで大量の電気を作り出し、それを必要としているのは大都市だ。村に作られる発電所も、いくつもの省を縦断する送電網も、ひとえに300キロメートル先にあるベトナム最大の都市ホーチミンのためなのである。

日本と同じく、ベトナムは南北に長い国土を持ち、海岸線に沿って大小の都市が点在する。送電ロスを少なくするためには、電力を多く消費する都市近郊に発電拠点を作るほうがいい。しかし、実際には人口が集中する大都市は避けられている。ましてや未知の電源、原発。遠隔地に発電所を置き、地元を通り越して電気は中枢都市に送られる。

福島第一原発で作られた電気は、約250キロメートル離れた東京に送られていた。日本と似た構図はここベトナムでも作られつつある。

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