ベトナムが「福島化」する恐れはあるか 日本とベトナムの深い関係

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ベトナムの電気に食い込む“オールジャパン”

ビンタン火力発電所では、昨年末、第4発電所の建設を三菱商事が受注することに決まった。大型石炭焚き発電プラント2基(合計出力120万キロワット)を納入するもので、プロジェクトの発注元はEVNである。

「日本はEVNの電力プロジェクトに対する支援リストでトップにあり、財政支援は総額4600億円に上る」(ファン・レー・タインEVN社長)。

これまでEVNの電力事業には、官民合わせて日本側から多くの支援が行われている。EVNの運転出力の約18%、ベトナムの電力システム全体でも約10%が、日本の資金援助に関連した電力プロジェクトだという。

原発輸出についても、受注の窓口として設立された国際原子力開発(東京・千代田区)は、東京電力など電力会社9社に、東芝、日立製作所、三菱重工業、政府系の産業革新機構が共同出資した、“オールジャパン”を標榜する株式会社だ。「日本」はここでも深くベトナムの電力事業にかかわることになる。

また、タイアン村で日本原電(東京・千代田区)が行っている原発導入可能性調査には、日本の復興予算が使われていたという報道が一部にある。ここまでくると予算の上で福島とタイアン村に区別はなくなる。知らぬ間に日本は、ベトナムの原発とただならぬ関係になっているということか。

「神の波」が押し寄せる浜辺

再びタイアン村。グォーさんは言う。

「ベトナムが発展するには電力が必要。ここは地震がないから、日本のような事故は起きないと聞いている」

確かにベトナムには地震が少ない。地震性の大津波があったという確実な記録も見当たらない。ただし、台風の襲来と季節風の影響で、海水面が一気に上昇して押し寄せる「高潮」は頻繁に起きている。ちなみに、津波も高潮も、河口部での洪水も、ベトナムでは区別なく「ソン・タン」と言うらしい。ソンは「波」、タンは「神」だ。

その「神の波」による被害は古くから報告されている。長い海岸線の各地に、家屋の倒壊や船舶の沈没、また内陸への浸水などの記録や記憶が残る。高さ1~2メートル程度から、最大で8メートルの高波が沿岸部を襲い、いずれも多くの建物と人の命を奪ったというものだ。

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