上のグラフに示すように、「固定資本ストックマトリックス(実質:連鎖方式)」における2011年連鎖価格での固定資産合計額は、ほとんど不変です。2008年末には1697兆円であったものが、2012年末には1651兆円にまで減少しました。
その後、増加していますが、2018年末で1686兆円になったにすぎません。
つまり、ここ10年程度の期間の日本の設備投資は、資本減耗(減価償却)を補填するにすぎないものでしかなかったということです。
したがって、ベースラインとしては、資本ストックの成長率をゼロとすることが適切でしょう。
なお、2019年財政検証では、資本ストックの増加率は、2020年には0.9%であり、2039年の0.2%まで徐々に低下していくとしています。
実質成長率はマイナス0.4%程度
以上をまとめると、基本式Aから、「労働と資本の寄与による実質成長率は、マイナス0.4%程度」ということになります。
前回、財政検証ではTFPを除いた場合の実質成長率は、マイナス0.3%からマイナス0.5%程度であると言いました。この中央値は、上で見たのとほぼ同じものです。
(ハ)技術進歩率は1%程度?
基本式Aの第3項は、労働や資本で説明できない経済成長です。
将来の予測を行う場合には、この大きさをどのように想定するかによって、結果が大きく変わります。
その中身は、通常言われる技術進歩だけでなく、規制緩和によって新しい事業ができるようになることなども含みます。このように、ここにはさまざまなものが含まれるため、その見通しは非常に難しいのが現実です。
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