日本がこの先もずっと低成長しか望めない理由 労働力が減って実質成長率はせいぜい0.6%

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過去のデータで計算しても、それは「労働や資本という明確に捉えられる要因による経済成長率と実際の経済成長率の差」として計算するだけなので、それが一体どのようなものであるかはわかりません。

そしてこのような要素が、成長寄与要因の中でかなり大きな比率を占めているのです。

公的年金財政検証では、「『平成19年度年次経済財政報告』等において、1%程度の水準まで高まっているとの分析がある」ことを引用しています。

そして実際の計算では、0.7%から1.3%までの値を想定しています。

政策の評価が変わってくる

技術進歩率として1%を想定すると、すでに述べたことと基本式Aから、潜在成長率は0.6%程度ということになります。

これは、従来の長期見通しで想定されていた値よりはかなり低めです。このため、さまざまな政策の評価が変わってきます。

財政収支試算は、「いつになっても目標は達成できず、むしろ赤字は拡大する。財政危機は深刻化すると」と読むべきです。

そして「財政健全化は、消費税の増税や社会保障費の思い切った削減を行わない限り、実現できない」と読むべきでしょう。

公的年金財政検証は、「所得代替率は引き下げざるをえず、年金財政は破綻する」と読むべきでしょう。そして「それに対処するには支給開始年齢を70歳に引き上げる等の措置が必要になる」と読むべきでしょう。

高い成長率を想定する場合には、なぜそのように考えてよいかを明示する必要があります。

そうでなければ、将来予測は、深刻な問題を覆い隠す目潰しにしかなりません。

また、参考ケースを示すのであれば、楽観的な見直しを示すのではなく、慎重な見通しを示すのが望ましいです。

上で述べたように、説明できる成長要因である労働と資本だけをとれば、多分マイナス成長になるのです。ですから、慎重な見通しを示すのであれば、ゼロ成長の場合にどうなるかを示さなければなりません。

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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