あるプロジェクトから新たな仕組み作りの実践の世界へ
嵯峨は1998年に日本総研に入社。入社早々にアサインされたのはICカードプロジェクトだった。当時、日本ではまだICカードは全く普及しておらず、今後ICカードを普及させていくために必須の多機能化をいかに実現するか、そしてその使い方を検討する、というのがプロジェクトのミッションだった。
使い方の一つの候補として、ある特定の目的やコミュニティで通用する地域通貨があがった。嵯峨は、海のものとも山のものとも分からないこの地域通貨を調べることに。
国内にはほとんど事例がなかったので、海外調査が中心となり、関連するメーリングリストに入っていたところ、2000年末に世界的に広がった地域通貨の大元を作ったカナダ人が日本に来るということから、たまたま声がかかり、会うことになった。さらに会ってみたら、一緒に日本でやってみないかと言われて、本業では地域通貨を研究しながら、2001年地域通貨フォーラムを実践の場として立ち上げた。
これが今の特定非営利活動法人アースデイマネー・アソシエーションの始まりとなっている。アースデイマネーの仕組みはこうだ。
登録されているNPOのプロジェクトにボランティアとして参加をすると、「r」という単位の円と等価の貨幣を入手できる。そしてそれを渋谷駅周辺の登録店舗で使うことができる。
嵯峨は当時の地域通貨フォーラムへの思いをこう語っている。「社会には、お金というものしか価値を測れるものはなく、まだ経済として動いてはいないが、多くの価値を持っているものが社会には眠っている。新しい価値尺度があれば、新しい社会的・経済的活動を促進できるはずだと思い、それらを実現するのが地域通貨ではないかと思った」と。
▼村尾の視点
人はその一生において多くの事象に偶然的に触れるが、その偶然が何かに繋がっていることが往々にしてある。一つ一つの事象との出合いについて、自分にとっての「意味合い」を考えてみるのも面白いかもしれない。
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