東京の「大水害」いつ起きてもおかしくない実状 リスクの高い地域への居住規制する案も浮上
「ここにいてはダメです」。東京都江戸川区がハザードマップの表紙に使ったフレーズは象徴的だ。台風19号上陸前後、SNS上では江戸川区のこの表現が「攻めている」「自虐的」だと話題になった。だが、海抜ゼロメートル地帯の江戸川区にとっては決して過度な表現ではない。
江戸川区の元土木部長で、ハザードマップの作成に携わったリバーフロント研究所の土屋信行技術参与は、「『ここにいてはダメ』とは、堤防など水害対策のハードが足りないという250万人の切実な悲鳴だ」と話す。
今回の台風19号ではこの広域避難計画の課題も浮き彫りになった。避難先候補は千葉県や埼玉県だが避難者が大量に出るため場所の確保ができていない。「住民を受け容れてもらえる自治体を探している段階」(江戸川区の防災担当者)。さらに、大型台風上陸前のJR・私鉄各線の計画運休は定着しつつあり、避難手段の確保も課題だ。「現実的には250万人全員が避難しきれるはずがない」(前出の土屋氏)との声も上がる。
現実化する居住制限
国の治水対策も、「防ぎきれない大洪水は必ず発生する」というスタンスに立ち始めている。整備に長い年月がかかるハードだけで対応していたのでは間に合わないことは明らかで、ソフト対策の充実に舵を切り始めたのだ。
さらに、水害リスクが高い地域に居住規制を行うという“最終手段”も浮上してきた。2019年末に始まった「気候変動を踏まえた水災害対策検討小委員会」では、「立地の規制や移転の促進」が検討課題として挙がった。
「ここまで踏み込んだのは、なんとか被害を減らさないといけないという危機感がある」(委員長を務める小池俊雄氏)。20年の夏頃までに一定の方向性を打ち出す予定だ。
首都圏では人口増にあわせて水害リスクの高いエリアでも住宅開発が進められていった経緯がある。今後、人口が減少していく中でどう水害に向き合っていくのか。水害から何をどこまで守るべきなのか。首都圏の治水は正念場を迎えている。
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