東京の「大水害」いつ起きてもおかしくない実状 リスクの高い地域への居住規制する案も浮上

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そのため、荒川では2018年から1670億円を投じて第二・第三調節池の建設を進めており、完成すれば、荒川でさらに5100万トンの貯水能力が加わることになる。ただ完成するのは早くても2030年頃の見込み。それまでに台風19号以上の豪雨が起こらない保証はどこにもない。

こうして、十分なハード整備がなされていないため、水害リスクの高い自治体はソフト対策に力を入ざるを得ないのが実情だ。

逃げ場を失った区民が殺到

昨年10月12日朝。台風19号が接近し、強まり続ける雨の中、東京都江戸川区役所にある災害対策本部は緊迫感に包まれていた。7時、区の西端を流れる荒川で流域の3日間総雨量が500ミリメートルを超える可能性があると気象庁が発表。区の想定では、総雨量が516ミリメートルを超えると荒川が氾濫し区の西側半分が浸水する。浸水の深さは最大で5メートルに達する。そのエリア内には区役所もある。

区は面積の7割が、満潮時の海水面より標高が低いゼロメートル地帯。もし荒川の堤防が決壊すれば、ほとんどの地域で浸水が最大2週間以上継続し約70万の区民が被災する。10時前、区はついに西側エリアに避難勧告を出した。

荒川の左岸およそ700メートルに位置する松江小学校には、8時ごろから高齢者や車いすの人など、避難に時間がかかる住民が自主的に集まり始めた。勧告が出た10時以降には家族連れの避難者などがさらに集まり、2階にある体育館が徐々に埋まっていった。

結果的に荒川の氾濫は免れたものの、もし雨量がさらに増えて最大規模の氾濫になっていたらこの松江小も5メートル近くの浸水がありえた。一般家屋では2階の天井あたりまで水につかる高さだ。

だが、ほかに逃げ場所がない区民は続々と避難所へ集まり続けた。松江小の体育館はすぐに満員になり、教室も開放したが避難者は収まりきらなかった。廊下にも避難者があふれ、最終的に1500人を超え松江小はごった返した。何も持たずに避難してきた住民も多く、配布した毛布やビスケットはすぐに足りなくなった。

避難所を運営していた東松一丁目町会の関口孟利会長は「区外に避難するのが安全なのはわかっているが、江戸川区で生まれ育って、ほかに頼れる場所がない住民も多い。今回は結果的に水が来なかったからよかった」と話す。「江戸川区は都心への交通の便もよく住みやすいのは間違いない。ただいつかもっと大きい台風が区を直撃したらどうなってしまうのか不安で仕方ない」(同)。

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