住宅購入時に見落としがち「離婚」の深刻リスク 年間20万組超が離婚、決して他人事ではない

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さて、ここまで、住宅ローン返済を担っていた夫が家を出ていく例を見てきましたが、逆に、夫が住み続けるという場合はどうでしょうか。

返済が滞る可能性自体は低いと考えられます。しかし、もしものリストラや休職で住宅ローンの返済ができなくなったり自己破産すると、たとえ離婚していても、“連帯”関係にある妻はローン完済まで大きなリスクにさらされ続けることは同じです。

離婚前に「連帯保証人」はやめられる?

それでは、離婚前に連帯保証人でなくなる方法はないのでしょうか。結論から言えば、ローン返済の途中で連帯保証人をやめることは極めて難しいと言えます。

というのは、連帯保証人はあくまで銀行などとの契約のため、銀行などの同意がなければやめることはできないからです。

離婚しても、相手が死亡しても、連帯保証人としての返済の義務を免れることはできません。団体信用生命保険に入っていれば死亡時の返済義務を保険で転嫁することができますが、入っていなかった場合は連帯保証人としての義務が遺族に相続されます。したがって、保険で転嫁できない「離婚」が、連帯保証人となることの最大のリスクと言えます。

連帯保証人でなくなるための方法として思いつくのは、住宅ローンを全額完済するか、代わりの連帯保証人を連れてきて銀行などを説得する、あるいは、住宅ローン残債に見合う価値のあるほかの土地・建物などを担保に入れる形で銀行などと交渉する、といった方法ぐらいです。

この中でも現実的なのは住宅ローンを全額完済するという方法です。住宅ローンの残額がほとんど残っていない場合や、潤沢な資金を持っていて一括返済ができるといったケースのほかは、「住宅ローンの借り換え」をすることで全額完済するのがポピュラーです。

夫婦合算で借りたローン残債に対し、どちらか単独の収入で借り換え可能な状況であれば、もう片一方は連帯保証人になるリスクを回避できます。

例えば、以前より収入がアップしていれば、離婚前に借り換えを実行することで、一方が連帯保証人となるのを避けることが可能です。また、住宅購入時は夫の単独名義で借りたものの、離婚時に妻の収入が潤沢であれば、妻に住宅ローンを借り換えて、財産分与も合わせて名義を妻に移すこともありえます。

ただし、これもすべての人ができる方法とは言えません。1人の収入では希望の額を借りるのが難しいために収入合算にしたご家庭では、もともと当時の年収に見合わない額を借りたというケースが多く、少々の年収アップでは単独の収入での借り換え審査にはパスしないからです。

いったん“連帯”で借りた住宅ローンは、完済までは連帯責任を負い続けることになります。住宅購入時に「離婚」を想定している夫婦はほぼ皆無ですが、長い人生に考え方が変わることもあり、離婚件数は2000年以降は20万件を超える水準で推移しています。

住宅ローンで借りる額をできるだけ少なくし(単独名義にすることも含む)、繰り上げ返済を前提に早めの完済を目指すことが、多様なライフスタイルのあり方や離婚時の選択肢を増やす最善の策と考えます。

竹下 さくら ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士

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たけした さくら / Sakura Takeshita

兵庫県神戸市生まれ。慶應義塾大学商学部にて保険学を専攻。損害保険会社の営業推進部および火災新種業務部、生命保険会社の引受診査部門の勤務を経てファイナンシャルプランナーとして独立。個人向けコンサルティングを主軸に講演・執筆を行う。『「奨学金」を借りる前にゼッタイ読んでおく本』(青春出版社)、『「家を買おうかな」と思ったときにまず読む本』(日本経済新聞出版社)など著書も多数。

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