楽天「送料改革」、出店者が反発する根本原因 主張は真っ向から対立、他社ECと何が違う?

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両者の認識の溝はなぜこうも埋まらないのか。その一因は、楽天市場で運営側と店舗側をつなぐ役割を担ってきた「ECコンサルタント」の機能不全にもあるだろう。

ECコンサルタントは楽天市場の出店者に対し、売り上げ成長のための経営アドバイスや企画の提案、ユーザー対応のサポートを行うために同社が設置する専門職だ。「店舗と二人三脚で走る身近なパートナー」と打ち出し、楽天独自の売りにしてきた。もちろん店舗にとっては、規約変更に関する問い合わせや、その変化に対応するための経営相談をする相手でもある。

だが現状、コンサルタント1人当たりの担当店舗数は100~200にのぼるという。店舗からは「何度連絡しても返事が来ない」「セールやクーポンの営業電話しか接点がない」といった声も聞こえ、本来の役割を果たしているとは言いづらい。

加えて、時代の変化への対応遅れもある。「(ECコンサルタントの大部分を形成する)新卒メンバーは、ECでの買い物経験があっても、運営の知識やノウハウには乏しい。一方で、出店者には10年、20年選手の方も増えてきた。EC黎明期にはそういった(コンサルタントと出店者の)差があまりなかったが、今は違う。それを『仕方ないこと』と済ませるのではなく、トレーニングを通じたレベルアップを図っていかなければならない」(楽天コマースカンパニーの野原彰人COO)。

楽天はここ数年、自店舗で成長を遂げてきた店舗がほかの店舗にノウハウ共有を行う場である「楽天ネーションズ」、店舗向けの顧客データ分析ツール「R-Karte(アールカルテ)」などの仕組みも拡充。ECコンサルタントだけに頼らない店舗支援体制を築こうとしている。

D2Cなど新業態のプレーヤーも台頭

国内のEC市場はモール間の競争が激化するのに加え、D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)と呼ばれる新業態のプレーヤーも勃興している。「環境変化についていけなければ消費者から選ばれないサービスになる。こうなってしまうと元も子もない。購買体験を改善し続ける努力が必要だ」(野原氏)。

送料無料ラインの統一は三木谷浩史・楽天会長兼社長の肝いり策でもある(撮影:今井康一)

楽天市場の出店者数は今年1月時点で4万9500店を超え、すべての店舗が納得する形で規約改定を進めるのは困難を極める。こうした変更をうまくビジネスチャンスに変える器用な店舗も少なくはないが、その変更1つで商売が成り立たなくなってしまう店舗や、反発を覚えて楽天を去って行く店舗も存在する。

折しも、2020年の通常国会では「デジタル・プラットフォーマー取引透明化法案」が提出・議論されようとしている。この法案は主に大規模なECモールやアプリストアを対象に、取引条件の開示などを求めるものだ。内外から監視の目が厳しくなる中、攻守のバランスをどう取るのか。楽天にとって難しい局面が続く。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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