日本の養豚が「アメリカに侵略」される驚愕事実 日米新安保60年の歩みはもう1つの歴史がある

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そこから繁殖のきっかけとなる生きた豚を送る。

でも、どうやって?

普通に考えれば、海上輸送だ。しかし、アメリカ中西部に位置するアイオワ州から、西海岸に運び出すまでに時間がかかる。そこから、太平洋を渡る。洋上の長旅と暑さに豚が耐えられるだろうか。とても体力は持つまい。

今でこそ、空路で日本とアメリカは半日もかければたどり着ける。だが、当時はプロペラ機の時代だ。太平洋を渡るにも給油を繰り返す必要がある。生きた豚を日本へ、それも飛行機で運ぼうなどとは誰も考えなかった。

ところが、アメリカ空軍が全面のバックアップを申し出た。これによって前代未聞の輸送作戦が実行に移される。生きた豚の空輸は国家的なプロジェクトにまでなって、この日、アイオワ州から羽田空港に運ばれてきたのだ。

それでも不安はあった。実際には36頭が送り出されたが、給油地のグアムで1頭が死んでしまうなど、輸送はやはり過酷を極めた。

のちに日本の畜産の歴史を変えることになる、このビッグプロジェクトを「ホッグ・リフト(Hog Lift)」と呼んでいる。

アメリカの本当の狙い

この35頭の豚が、日本の養豚の礎となっていく。山梨県に送られたアイオワの豚たちは、9年後に最後の1頭が死んでしまうまでに、35頭から約50万頭に殖えたと試算される。その豚たちが全国に広がっていった。今では日本の豚のほとんどがこのアイオワ豚35頭のなんらかの遺伝子を持つとされている。

支援と友好の架け橋として空を飛んできた豚。感謝感激で日本は迎え入れた。ところが、アメリカの本当の狙いは、豚以外のところにある。

山梨県には、豚と一緒にアイオワ州から農業指導員が送られてきた。種豚の世話をみながらアメリカ式の養豚技術を伝授するためだ。そこに必要となる飼料としてのトウモロコシを、アイオワ州は豚とは別に海上輸送で1500トン贈呈している。豚はこうして育てるのだ、と教えるために。

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