動き出したプーチンによるポストプーチン戦略 異例の年次教書演説と突然の内閣総辞職

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閣僚たちも青天の霹靂、正月気分を吹き飛ばされた「1月革命」(写真:President's website)

最大の変更点は首相と政府の任命を事実上、下院議会に委ねることである。年次教書演説では必ずしも明確でなかったが、16日の憲法改正に向けた作業部会で大統領自身が説明したところによれば、「議会が指名した首相候補を大統領が任命する。大統領は議会の指名した首相候補を拒否することはできない。そして首相は、議会に副首相、大臣を提案し、議会の同意を経て大統領が承認する。この場合も大統領に拒否権はない」。

まだ最終的な憲法改正案ではないので断定できないが、議会の多数派が政府を形成するフランス型に近いものとなる。プーチン大統領によれば、大統領には首相及び政府閣僚の解任権は残り、大統領制は守るということだが。次に、今は憲法には定められていない地方知事や主要政党の党首などによる国家評議会を憲法に定める正式な機関とするという。草案では「国家評議会は内政、外交の基本方針を定め、社会経済政策の基本的な優先政策を定める」とされている。そして上院の権限も拡充される。

こうした憲法改正にどのような狙いがあるのだろうか。

プーチン路線を変えさせない、院政を敷く

一つは、エリツィンの後継としてプーチン自らが行ったことの再現を防ぐことである。

エリツィンからプーチンへの継承においてプーチンは国家主権を強化して、欧米に対抗する強いロシアへと、ロシアの方向性を変えた。今の憲法の下では新大統領が再び路線変更に踏み切る恐れがあるとプーチンは考えているのではないか。憲法改正で上下両院の権限と大統領に対するチェック機能を強化して、さらに、国家評議会を公式の機関とすることで、新たな大統領の下でのプーチン路線の大幅な変更を防ぐ意図があるように思われる。

もう一つはプーチン院制への布石という側面だ。

この憲法改正によって退任後にプーチンがどのような地位に就くのか、さまざまな可能性が広がる。

いちばん直接的に権力を握る方法は、2008年と同じく「首相」となることだ。首相と与党党首を兼ねれば、下院も握り、大統領に対して十分独立した権力を振るうことができる。ただプーチン大統領も67歳。はたして国民生活に直結した日々の雑務の多い政府に縛られることにそれほど魅力を感じるだろうか。また国民生活が悪化すれば、直ちに首相に批判が向けられる。直接権力を維持するという面では一番わかりやすい方法だが、筆者は疑問に思う。

「与党党首兼下院議長」になるというやり方もあるだろう。そうすれば、政府はコントロールできる。ただ、下院の質の低い議論にプーチン議長が付き合うというのも、プーチンの立場に立つと、何を今さらという感じがする。

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