「仏教・儒教・旧約思想」が同時期に生まれた理由 「資源・環境の限界」で考える「地球倫理」思想

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このように記すと一見わかりづらく感じるかもしれないが、それは日本の文脈では“八百万の神様”とか「鎮守の森」といった表現、あるいは宮崎駿監督のジブリ映画などにも示される自然観であり、日本人にとっては日常的な感覚としても理解しやすいものだろう。

ちなみに、私はここ10年以上にわたり「鎮守の森・コミュニティプロジェクト」というプロジェクトをささやかながら進めており、御関心のある方は「鎮守の森コミュニティ研究所」のホームページを参照いただければ幸いである。

本稿では、前回も含め、スウェーデンの高校生グレタさんの話を導きの糸として、現在の私たちが人類の歴史のどのような場所に立っているかという視点を座標軸にしながら、「拡大・成長から持続可能性へ」という方向性の意味を、「地球倫理」という思想を軸に考えてきた。

それは一見迂遠であるように見えて、実は日本における伝統的な経営理念や企業行動の“DNA”と親和的な面を多くもち、また、その土台をなす「自然信仰」は、やはり日本において伝統的な「鎮守の森」的な自然観と共鳴するものだった。

現代の日本において求められているものとは

思えば日本は世界の中で“高齢化・人口減少のフロントランナー”でもあり、従来型の「拡大・成長」モデルとは異なる新たな社会像を率先して実現していくべきポジションにある。

SDGsやESG投資などの潮流も踏まえ、それをチャンスと捉え返しつつ、人類史における「第3の成熟・定常化」の時代における新たな思想や経済社会のありようを構想し、発信していくことこそが日本において求められているのである。

広井 良典 京都大学 人と社会の未来研究院教授

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ひろい よしのり / Yoshinori Hiroi

1961年岡山市生まれ。東京大学・同大学院修士課程修了後、厚生省勤務後、96年より千葉大学法経学部助教授、2003年より同教授。この間マサチューセッツ工科大学(MIT)客員研究員。2016年より京都大学教授。専攻は公共政策及び科学哲学。限りない拡大・成長の後に展望される「定常型社会=持続可能な福祉社会」を一貫して提唱するとともに、社会保障や環境、都市・地域に関する政策研究から、時間、ケア、死生観等をめぐる哲学的考察まで幅広い活動を行っている。著書に『コミュニティを問いなおす』(ちくま新書、大佛次郎論壇賞)、『日本の社会保障』(エコノミスト賞受賞、岩波新書)、『人口減少社会のデザイン』(東洋経済新報社)など。

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