「働かない大国」ドイツに住んだらどうなるのか 1カ月の休暇を取得してもなぜか社会は回る

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よくある言い回しだが「日本人は課題があれば完璧に仕上げようとして結果間に合わない。ドイツ人は雑な仕上げだが期限に間に合わせる」という言葉は正しいと、A氏は言う。

ドイツは移民国家であり「ドイツ人は」と一概に言えないが、ドイツで経験できる雑な仕事ぶりについては枚挙にいとまがない。下記はいずれも私自身や現地滞在経験者の体験談だ。

・ドイツ鉄道は悪評高く、遅延はしょっちゅう、指定席券を購入したが予約した車両が来なかったため空席を探す羽目になることも。
・自宅の暖房が壊れたので修理の予約をしたが、来たのは約束の時間の6時間後。
・クリーニング店に預けた服の一部が返ってこなかった。
・宅配便が来ず、追跡システムで調べると配送済みになっているが近隣の人に預けられてもいない。ふとベランダを見たら、投げ込まれた荷物がそこに(なお住居があるのは2階)。
・引っ越し業者に頼んだら引っ越し中に高い食器類を入れた箱だけ紛失。

狭い範囲でもこれだけの体験談が集まった。サービス砂漠と呼ばれるドイツの実情だ。

日曜または祝日休みの「閉店法」も存在

また、ドイツに旅行した人なら身をもって体験したこともあるだろうが、ドイツには「閉店法(Gesetz über den Ladenschluß: LadSchlG)」という法律がある。州ごとに細かい規則は異なるが、特定の日を除き日曜日および祝日は完全閉店という点では共通している。

「そうはいっても開いている店舗もあるだろう」という考えは甘い。

ガソリンスタンド、キオスク(ドイツのキオスクは街角にあるスタンド)、中央駅などの駅店舗、空港店舗など一部を除けば本当にやっていない。日本におけるコンビニ的なものはない。 「閉店法」は飲食店には適用されないのでレストランなどはオープンしているが、クリスマスの完全閉店ぶりは徹底している。

小さな町のホテルでクリスマスイブに、開いている数少ないレストランにあぶれ、開いているキオスク1つなく、手持ちのポテトチップス1袋をクリスマスディナーとしたのは紛れもなくわが一家だ。

この状況をドイツ人が不便に思っていないのかといえば、日曜日にドイツ国境の隣国の街に行くとショッピングモールにはドイツナンバーを付けた車があふれているので、「やっぱり買い物はしたいんじゃないか」と突っ込みたくなる。

しかし、「閉店法」は消費者のためのものではなく、古くは教会の影響によるもの、近年は労働組合からの要請によるものだ。それだけ労働組織の力は強い。交通機関のストライキもしょっちゅうあり、不便さを助長する要因の1つになっている。

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