「働かない大国」ドイツに住んだらどうなるのか 1カ月の休暇を取得してもなぜか社会は回る

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ドイツ人も残業をするということは説明した。では、休暇はどうだろうか。

フランクフルトの街並み(写真:弁護士ドットコム)

これに関して言えば、一般的な会社員ならば本当に数週間の休暇を取る。中には1カ月休暇を取る人もいる。日系企業のドイツ現地法人勤務の知人ドイツ人は、1カ月間の休暇をとってメキシコとアメリカでのモータースポーツ観戦ツアーを敢行した。

公務員でも長期間の休みを取るため、仕事が組織ではなく属人的に処理されるドイツでは、担当者が休みなせいで手続きが思うとおり進まないということもままある。

有給休暇は、「連邦休暇法(Bundesurlaubsgesetz)」により、6カ月勤務で年24日以上と決まっている。日本は6カ月勤務で年10日だ。ドイツではこの有休を本当に消化する。ポイントは、医師の診断書があれば有休休暇と別に病気休暇を取れることだ。なので、病気になったときのために有休を温存しておく必要がない。

それなのに社会がまわっているのだからすごい、という感想を持つだろうか。

・取引相手の担当者が休み、事情がわかる人がほかにいないか聞くと「その担当は自分じゃないからわからない」と軽くあしらわれた。
・社内で鍵を保管している人が長期休暇に入ってしまい、書類キャビネットが開けられなくなった。

といった実害も出るが、それでも確かに社会はまわっている。間違いなく言えるのは、社内で情報共有し、客先へ迷惑を掛けないシステム作りを徹底したうえでの休暇取得ではない、ということだ。

迷惑と不便を許容する土壌あればドイツ式の導入が可能

ただ、同じドイツに滞在する日本人でも、ドイツ企業ではなく、日系企業の駐在員は若干意識が異なる。日本企業相手に商売をしている場合、駐在員だけ長期休暇を取ることは上司からの評価的にも、客対応的にも許されるものではないようだ。

誰だって担当者不在で物事が前に進まなければいら立ちもする。だがそれが許容されるのは、次に休暇を取るのは自分だからだ。お互いに迷惑を掛けあい、不便をかこちあいながら生きる社会なのである。

結局のところ、われわれ日本人は便利さを享受することに慣れている。それがお互いに首を絞め合いながら達成したものだとしても。そして、誰かに迷惑を掛けることには慣れていない。1度便利を享受してしまうと、不便な社会に移行していくのは難しいものだ。

迷惑と不便を許容し合い、他人が何をしようと同僚や顧客が自分にどのような評価を下そうと気にしない、というメンタリティーの下で育たない限り、ドイツ式の休暇の取り方の導入は難しいというのが実感だ。

(ライター:拝田梓)

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