「働かない大国」ドイツに住んだらどうなるのか 1カ月の休暇を取得してもなぜか社会は回る
残業するが「長時間働くほど評価が高い」わけではない
国として、置かれている状況がまったく異なるため、単純比較はできないが、確かに言えるのは、ドイツ人も働かないというわけではない、ということだ。とくにマネジャー層に顕著だ。
ドイツ企業に日本で採用され、ドイツ赴任後に現地採用に切り替えたA氏によれば、A氏の会社ではマネジャー職は仕事内容で給料が決まっていて、1日の労働時間は決まっていないし、残業代も出ない。しかし、ガツガツ仕事で上を目指す人間は進んで残業するし、家に仕事を持ち帰ることもあるという。
一方、時間で給料をもらう職種の場合、1日で働く時間の上限は原則8時間と決まっており、上限を過ぎて働いた分は残業代ではなく時間で補償される。つまり、その分ほかの日に早く帰ったり、貯まった残業時間で休暇を取ることで還元されるという。この労働時間管理システムは特殊なものではなく、ドイツで普及しており、「労働時間口座(Arbeitszeitkonto)」と呼ばれる。ただし、大企業勤務かどうかで見えてくる社会は異なる。
個人経営の花屋勤務のB氏によると、クリスマス前には店員総出で深夜1時、2時に及ぶまでクリスマス用の商品作りに追われるという。ドイツの法律では従業員を10時間を超えて働かせることは法律違反となるため、サービス残業の扱いとなっているようで、日本と同様に中小企業ではサービス残業も横行しているようだ。
ドイツにも確かに残業は存在している。ただし、「長時間働く人ほど評価が高い」という文化的背景はなく、雇用契約で仕事内容が決まっているため「それは自分の仕事ではない」という意識が徹底しており、ほかの人が帰らないから帰りづらい、といった空気はないという。