ゴーン会見に日本人が納得できない4つの理由 論点すり替え情報隠し自画自賛で日本を疎外

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そもそもゴーン氏はこの記者会見を「カルロス・ゴーン、メディア・イベント」と題して、参加者に「カルロス・ゴーンの記者会見への出席を認めることを本メールにてお知らせいたします」という通知を送っていました。また、会見場の一部にはゴーン氏の関係者席があり、そこから拍手が上がるシーンもあったそうです。

そんなところも、「逃亡したことをイベント扱いなんてけしからん」「釈明をするための会見なのになぜ上から目線なのか?」と日本人たちが納得できない理由となっているのでしょう。

グローバルなのに当事国の日本を疎外

もう1つ見逃せないのは、質問を国別で受け付け、4カ国語を駆使して返していたように、ゴーン氏がグローバルな視点を意識して臨んでいたこと。ところが、親交のある特定メディアに「マイフレンド」、親しい記者に名指しで呼びかけた一方、日本人の記者で会見場に入れたのは、テレビ東京、朝日新聞、小学館の3社のみでした。

小学館の記者から「なぜ日本のメディアはこんなに少ないのか?」と質問されたゴーン氏は、「日本のメディアを除外しているわけではない。この場所に客観性を持った記者たちに来てほしいと考えている。会場の外にもあなたたちと同職の人たちがいますが、偏った視点を持った記者たちが正しい分析ができるとは思わないので」と語りました。「排除しているわけではない」と言った直後に排除したことを話す矛盾に疑問を抱かざるをえません。

さらにゴーン氏は、「だからといって接点を持たないようにしているわけではありません。BBC、CNNなどのさまざまなグローバルメディアがここにいるし、大きなメディアから追及を受けるかもしれない。ただ私は14カ月間厳しい質問に耐えてきたので、厳しい質問に応じる用意はある。会見場は限られたスペースであり、だから日本のメディアが少ないという印象を受けたのかもしれない」と話しました。

当事国であり、最も身の潔白を示すべき相手の日本メディアを外す理由に「スペース」を挙げたことに納得する日本人はいないでしょう。ゴーン氏が「日本を愛し、日本国民を愛している」「日本のみなさんは大変よくしてくれた。日本を傷つけるつもりはまったくない」と言葉を重ねたところで、素直に受け止められる人はほとんどいないのです。

会見を見ていて、このようなゴーン氏の姿勢を見た海外メディアの熱が徐々に下がっていく様子を感じたのは私だけでしょうか。ゴーン氏は、「今後数週間以内に何か行動を起こすことに期待してほしい。どうやって嫌疑を晴らしていくのか、どのような行動を取っていくのか、すべての証拠についてみなさんに開示していきたいと思っている」と語っていました。しかし、決定的な新事実を出さない限り、この日以上に冷めた反応しか得られないでしょう。

会見でゴーン氏が見せた「論点のすり替え」「すべての情報を開示しない」「自画自賛とイベント仕様のショーアップ」「グローバルから疎外された日本」。この4つのスタンスが日本人の気持ちを逆なでし、思っていたほど世界的な支持を得られなかった理由ではないでしょうか。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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