61. その大阪に生まれた漫画家・手塚治虫の雑誌連載第2作目となるのが『新世界ルルー』である
62. 1951年1月から「漫画と讀物」(新生閣)に連載された作品で、手塚は当時22歳
63. この作品の約1年前に同雑誌に発表した『タイガー博士の珍旅行』が手塚初の雑誌連載作品であった
64. 『新世界ルルー』は、漫画家のロック少年が時間を止める能力を使い不思議な活躍をするファンタジー
65. 異次元に存在する〈新世界ルルー〉で身に付けたその特殊能力で悪漢を懲らしめるというストーリーだ
66. 「モンテ=クリスト伯とパラレルワールドを組み合わせたでっちあげ」(講談社版手塚治虫全集あとがき)
67. 締め切りに追われた執筆当時を振り返り手塚はそう自評しているが、のちの手塚ワールドにつながる良作である
68. 『新世界ルルー』の時間を止める少年というアイデアが後年『ふしぎな少年』に発展したとも考えられている
小説の中の「新世界」とは
69. 『すばらしい新世界』は、イギリスの作家オルダス・ハクスリーが1932年に発表したディストピア小説
70. ディストピアとはユートピア(理想郷)の反対の社会を指し、諧謔と皮肉で描きだした文明論的SF小説だ
71. 舞台は26世紀のロンドン。最終戦争が終結し、世界は暴力を排除した安定至上主義社会を形成している
72. 文化人は絶滅し、それ以前の歴史や宗教は抹殺され、世界統制官と呼ばれる10人の統治者が支配
73. キリスト教に代わってT型フォードの大量生産で名を馳せた自動車王フォードが神として崇敬されている
74. 人間は体外受精によって受精卵の段階から選別され、家族はなく、階級ごとに体格も知能も決定
75. 孤独を感じることもなく、隠し事も嫉妬もない。誰もがほかの皆のために働く楽園=すばらしい新世界だった
76. しかし、その世界のあり方に疑問を感じる3人の青年が出会ったことで物語は大きく動き出していく
77. 2つの大戦に挟まれた激動の時代に書かれた本書で、ハクスリーは行きすぎた資本主義と効率化を警鐘
78. 作品タイトルの元になっているのは、ウィリアム・シェークスピアの戯曲「テンペスト」に登場するセリフだ
79. 「テンペスト」は1612年頃に初演されたが、その第5幕第一場に「O brave new world」というセリフがある
80. このとき〈brave〉という単語は「勇敢な」ではなく、〈bravo〉と同様に「すばらしい」の意味に訳される
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