「友人を切り捨てろ」が一般人には危険なワケ

価値ある情報は「弱いつながり」がもたらす

作家の五木寛之さんは、「社会問題の『3K』といえば、悪辣な労働環境である『危険』『汚い』『キツい』のことでした。私は、いまの時代の3Kは、『健康』『金銭』『孤独』」と形容している。「健康」や「金」にはだれもが関心を持ち、社会として、その重要性は認識されているが、「孤独」に関しては、「孤独はいいものだから、1人でいい」という論調のもと、社会的には何の対策も取られていないのが実情だ。

不安で寂しい思いを抱く「孤独」と「1人」はまったく別物であるし、孤独が悪なのではない。孤独を楽しめるのならばいいが、孤独を我慢し続けなければならない状態を強いられる社会に希望は見いだしにくい。絶望的な孤独は「死に至る病」であり、それをすばらしいと勧めることは、短期的な痛み止めを処方するだけの行為でしかない。今の日本には、そうやって何とかやり過ごそうという事なかれ主義がはびこっている。

「1人でいいよ」ではなく、「1人じゃないよ。話を聞きましょうか、助けましょうか」と寄り添う人がいて、誰にでも居場所がある社会のほうがはるかに生きやすいはずだ。

今や男性の4人に1人、女性の7人に1人が、一生涯結婚せず、将来的には、男性の3人に1人が生涯未婚となる。単身世帯も増え、これからは、誰もが「1人」で生きていく時代になる。「1人」でも、「孤独」にならずに生きていく手立てを考えていく必要があるだろう。そのためには、ピンで生きる強さを養いながらも、心地よいつながりをお金や健康同様、蓄えていくノウハウが大切になってくる。

最近は、他人に時間を使うな、友人など切り捨てていい、などといった極論がウケているが、有名人なら金もあるし、何もしなくても人が寄ってくるわけで、凡人が同じように人を遠ざけていけば、最後には寂寥感にさいなまれるのが関の山である。絶望的な孤独を回避するには、別に結婚していなければならない、誰かに同調しなければならない、嫌な人とも付き合わなければならない、というわけではない。

ゆるやかな「集活」がちょうどいい

家族や血縁などの強いつながりに頼らなくても、弱いつながり(weak ties)によって、人の幸福度は大きく向上することが多くの研究結果から明らかになっている。犬の散歩で、近所の人と交わす挨拶、なじみの店の店員とのちょっとした会話。そんな雑談(small talk)でも、人は自分の存在を認められ、孤独感を癒やすことができるのだ。

「価値ある情報は、家族や親友、同じ職場の仲間のような強いつながりよりも、ちょっとした知り合いや、知人の知人のような弱いネットワーク(弱い紐帯)からもたらされることが多い」。これは、1973年にアメリカ・スタンフォード大学の社会学者グラノベッターが「strength of weak ties」(「弱い紐帯の強み」)という論文で示した学説だ。

親友や家族などのコミュニケーションに比べて、単なる知り合い関係では、情報の冗長性や多様性が低いため、仕事探しなどにおいても、弱いつながりのほうが役立ったりするという。

これは確かに一理ある。筆者も子どもの進路先や自身の健康問題など、ママ友やジム友から貴重な情報を入手し、随分と助けられてきた。名前も知らない人とでも、ちょっとしたおしゃべりでも気はまぎれるし、誰かが自分の話を聞いてくれるという安心感は、孤独感を和らげる。

沖縄には、人生のあり方を考えるすてきな方言「うちなーぐち」がたくさんあった。その1つが「いちゃりばちょーでー」だ。「1度出逢ったら皆兄弟、だから仲良く付き合おう」という意味らしい。人生100年時代、独りぼっちでは、誰も生きてはいけない。人間関係を店じまいする「終活」を早々と始める前に、ゆるやかな「集活」を試みてみるのはいかがだろうか。

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