英国風パブ「HUB」がアナログにこだわるわけ ビール1杯400円、あえて人の接客を重視する

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――飲み会をスマートにしたいというニーズは今もあると思います。

今でこそキャッシュオンデリバリーが便利だと言われているが、昔は「自分が買ってこい」「伝票持ってこい」というお客さんが多かった。食べ物を充実させろとかね。

今もいるけど、基本的には気軽に飲んでさっと切り上げる場。行ったら誰かいるかな、とふらっと立ち寄る場でもある。そうなってきたのはここ5~10年だ。

――外食で進むデジタル化にどう対応しますか。

居酒屋でのタッチパネル導入のように、生産性を高めていく上での取組はどんどん進んでいる。でも、僕はデジタル化するとパブの良さがなくなると思っているので、様子を見る。

パブはアナログの世界。徹底的に人を磨いてフレンドリーな接客をする。イギリスのパブで一番良いところは人と人のつながり。厨房はどんどん進化していいが、売り場だけは絶対にアナログの世界を崩さない。わざわざカウンターに行って口で注文する、目の前で自分の飲み物を待つ、ということがあってもいいのでは。

うちより安いお店はたくさんある

――日本人にパブ文化を根づかせるため、2020年は何に取り組みますか。

来てもらうしかない。いくら説明しても、パブって「ああ、そう」で終わる。だが一度来てもらえれば、1杯400円のビールだけ飲んで、本当にそのまま帰ることができる。

「パブはアナログの世界。徹底的に人を磨いて、フレンドリーな接客をする」と、パブ文化の魅力を語る太田社長(撮影:梅谷秀司)

「ビール1杯190円」の看板を出す店など、うちより安い店はいくらでもあるが、その値段で本当に帰れるのか。お通しもあるし、途中で帰りにくい雰囲気もある。パブはその意味で言えば、本当にお酒を気軽に楽しめる。お酒が飲めない人も、時間がある人もない人も、外国人も日本人も。まずは来てもらうためにどうするか。SNSなど、武器はたくさんある。

――2024年までに現在114の店舗数を200にすることが目標です。

これは、はっきりいってハードルが高い。今のペースでは誰がどう計算しても追いつかない。200店舗を達成するために急いで10店を出すのは、投資家にとって良くないことだ。

30数年間、この(外食)業界をみてきたが、外食はそれ(大量出店)でしんどい思いをしている。我々は特にイギリス風パブ一本でやっている。ブランドの陳腐化は事業の終わりで、絶対に陳腐化させられない。しんどいときはいったん止めて、病気になっているところを治してから進む。この繰り返しをしているからこそ(不採算による)退店が(2001年以降)1店もない。

――外食産業が苦境にあえぐ中、ハブは20期連続の増収、4期連続の増益を達成中です。

新店で売り上げが増えるのはどちらでもいいが、既存店は確実に成長させたい。この(ビール1杯400円などの)値段設定で一等地に金をかけて開店しているので赤字が続くが、その間に既存店が稼いでくれていれば、新店もそのうち稼ぐ側に入る。

新店はみな「親不孝者」だと言っているが、そのうち改心して「孝行息子」になってくれる。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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