第三のビール「のどごし」が「金麦」に敗れた事情 広告宣伝費の減少とトレンド変化が直撃

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しかし、その後ブラジル事業が苦戦し始めると、広告・販促費を増やして国内ビールに再び力を入れ始め、とくにのどごしブランドの拡販に注力。派生品や期間限定品、シールによる応募キャンペーンなど、「のどごしの販売を下げ止めるため、あらゆる手を尽くした」(キリン広報)という。その結果、2015年に販売数量が前年超えとなった。

のどごしブランドが販売数量を落としたもう1つの理由は、トレンドの変化が挙げられる。のどごしは「新ジャンルで数少ない大豆由来のブランド」(業界関係者)というように、発売当初主流だった製法でつくられるブランドだ。ただ、現在は麦の風味を打ち出した、よりビールに近い味が消費者の支持を得ており、麦風味の商品も増えている。

サントリーは「金麦」新商品で対抗

もちろんキリンも無策だったわけではなく、のどごし派生品として、2017年に麦芽由来の「のどこし スペシャルタイム」を投入したが、販売減少に歯止めはかからなかった。

サントリーはライバルの転落を黙って見ていなかった。金麦ブランドの販売数量も2016年から3年連続で前年割れしていたが、2019年2月に金麦ブランドの新商品「金麦<ゴールド・ラガー>」を投入した。コクと飲み応えがあることを訴求した商品だ。

「金麦<ゴールド・ラガー>」は2018年にキリンが投入した新ジャンルの「本麒麟」と同じ赤いラベルに金のロゴを採用し、業界内では「本麒麟包囲網」と呼ばれている。「金麦ブランド合計でのどごしブランドの販売数量を上回れることができれば、営業現場にとっては大きな追い風となる」(サントリー広報)と、販売首位を奪取すべく拡販に尽力してきた。

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