米中新冷戦で2020年に見ておくべきリスク 脆弱な「第1段階」停戦合意の後、何が残るのか
米中間の貿易戦争は、12月13日の「第1段階」合意発表とともにいったん収束に向かっている。2020年1月に予定通り「第1段階」に署名した後は、11月のアメリカ大統領選挙前までは、トランプ政権が中国に追加関税を課す可能性は低い。だが、「第1段階」合意は脆弱な停戦合意にすぎず、緊張緩和「デタント」の局面は一時的だ。長期戦であり、いずれ対立は再燃する。
対中強硬姿勢は今のアメリカでは党派を超えて支持を集めている。ピュー研究所が2019年春に実施した世論調査によると、アメリカ国民の60%が中国を好意的に見ていない。「好ましい」とする数値はトランプ政権発足時の47%から13ポイントも悪化した。
トランプ政権は中国との交渉において、威嚇して優位な立場を築き、中国の譲歩を引き出すという手法を繰り返してきた。だが中国もトランプ大統領の支持基盤を標的に主に農業州の農畜産品に報復関税を課すなどで対抗。昨今ではトランプ政権の関税策の効果について限界が指摘され、アメリカの市場に及ぼす経済的影響に対する懸念が広がっていた。
政治的理由から、追加関税発動は断念
「第1段階」では、アメリカ側の発表によると、中国がアメリカ産の農畜産品の輸入を年間400~500億ドルに増やす自主輸入拡大(VIE)で合意した。2012年のピーク時の260億ドルを大幅に上回る意欲的な数値であり、その実現性は不透明だ。だが、基本的に「第1段階」合意の効果は、これまでの貿易戦争で失ったものを元の状態に戻すにすぎない見通しだ。
トランプ政権の支持基盤である農業州において、自然災害も重なって倒産や自殺が増えて不満が高まりつつあったため、政権は成果を早期にアピールする必要性に迫られていたといえよう。
今回、アメリカが追加関税の一部を撤廃しなかったら、2019年春のように中国の強硬派からの反発で合意に至ることができなかった可能性が高い。一方で、政権が広範囲に既存の追加関税を撤廃してしまうと、民主党や共和党内からの批判が予想された。追加関税第4弾については、対中強硬派のピーター・ナバロ大統領補佐官を除き、前半についても後半についても、政権内部の側近は反対していたという事情がある。
その結果、関税引き下げは第4弾前半(通称リスト4A)の追加関税率を半減させ、第4弾後半(通称:リスト4B)の発動を見送るといった妥協策に落ち着いた。
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