米中新冷戦で2020年に見ておくべきリスク 脆弱な「第1段階」停戦合意の後、何が残るのか
なお、「第1段階」に含まれた知的財産権については、すでに中国が法改正を実施したものだ。金融サービスの自由化についても、以前の交渉で中国がコミットしていたものだ。 仮に中国側が「第1段階」合意内容に反して、成果を見せない場合、または「第2段階」交渉の進展にアメリカ側が不満を抱いた場合、米中貿易関係は再び緊張が高まるリスクが大いにある。
民主党のチャック・シューマー上院院内総務などは「第1段階」合意を批判し始めており、「第2段階」交渉に進展が見られなければ議会民主党や民主党大統領候補からの厳しい批判にもさらされるだろう。
対中強硬策は超党派で合意できる唯一のテーマ
米中対立を再び激化させるリスクとして、人権問題・民主化運動も注目される。
今のアメリカ政治では共和党と民主党の2極対立が鮮明だが、ほぼ唯一超党派で合意がみられるのが対中強硬策だ。議会においてその勢いは増している。11月27日、トランプ大統領が署名して成立した「香港人権・民主主義法」を皮切りに、2020年大統領選に向けて議会では中国に対抗する法案が次々と俎上に上ってくる可能性がある。
今のところ、「香港人権・民主主義法」に限れば、同法成立はシンボリックな動きであり、アメリカの基本的な対中政策が変わることはない見通しだ。議会主導で成立した同法は、政権に多くの裁量を付与しており、政権主導で進めてきた米中貿易協議への影響は現時点では限定的である。
国民が休暇モードに入っていた感謝祭前日に署名したことからも、トランプ大統領は米中貿易協議への影響に配慮し、これがアメリカで大きく報道されるのを避けたとも言われている。また、大統領は署名と同時に発表した声明文で「同法の特定の条項は大統領が憲法上保有する外交政策の権限に干渉する」と述べ、中国に対して同法を執行しないことを示唆している。
ただし、これまで人権問題と米中貿易協議は別物として、米中両国とも扱ってきたものの、両方を分離することは不可能となっていくことも想定される。「香港人権・民主主義法」成立によって、議会で眠っている他の対中政策の法案が動き始める可能性があるからだ。例えば、これに続いて12月3日、「ウイグル人権政策法案」が下院で可決した。今後、上院でも同法案を可決するのはほぼ確実視されており、「香港人権・民主主義法」で勢いに乗る対中強硬派が、他の対中政策に関わる法案についても、可決に向けて動き出すかもしれない。
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