米中新冷戦で2020年に見ておくべきリスク

脆弱な「第1段階」停戦合意の後、何が残るのか

追加関税第4弾について政権内外で懸念が高まっていたのは、トランプ政権にとって政治的影響が大きいためである。第4弾は6割以上が消費財であり、資本財は約3割、中間財は約1割にすぎない。特に後半の12月15日発動予定だった品目は大半が消費財で、関税は消費者を直撃するとみられた。

消費財の場合、それまでの中間財と異なり輸入企業が消費者に追加関税分を転嫁する可能性も高く、中国人民元安でやや緩和されるものの、小売価格の上昇が予想された。ウォルマートなどの小売店で中国製の消費財を購入するのは大統領の支持基盤である白人労働者階級であり、その財布を直撃する。

したがって、今後も、トランプ政権に政治的ダメージを与えかねない第4弾後半の関税が再浮上し、発動される可能性は低い。関税のカバー範囲はすでにピークを迎えたといえよう。

一方、対中追加関税の第1弾と第2弾については、「中国製造2025」の対抗措置であり、代替品を他国から輸入できるものが多い。政権幹部はこれを「至宝」と呼んでおり、少なくとも現政権下では第1弾と第2弾の関税撤廃の可能性はほぼゼロで、第1弾と第2弾については関税率がさらに引き上げられる可能性もあると見る向きが多い。

中国に求めた構造改革ではいまだ成果なし

2020年に対立が再燃するリスクとしては次の3点が挙げられる。

第1に中国の構造改革の遅れである。国家資本主義体制に基づく中国の経済政策は、戦後、欧米諸国が築き上げた新自由主義体制と乖離し、今日の世界貿易・投資に歪みを生じさせていると、アメリカは懸念している。そのため、外圧による中国の改革を試みている。だが、トランプ政権が1974年通商法301条報告書でも指摘し、中国の貿易投資慣行の中で最も問題視し構造改革を求めてきた多くの点は、「第1段階」合意でも未解決である。

産業補助金問題、ファーウェイ、国有企業問題など多くの課題は第2段階あるいは第3段階の交渉に先送りとなった。「第1段階」合意は当初の目的であった構造改革の内容が欠けているため、対中強硬派からは「痩せこけた合意(スキニー・ディール)」と揶揄されている。12月15日、CBSテレビの番組でこの点を追及されたロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表も「とても見事な合意内容であるが、すべての問題を解決できるわけではない」と認めた。

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