「家族と格差」描く映画が世界で注目される理由 カンヌ受賞「万引き家族」「パラサイト」が象徴
その言葉どおり、アメリカの映画評論集積サイト「ロッテントマト」に掲載された評論家たちの支持率は99%。評論家たちのレビューを見てみると、格差社会を皮肉に描いた語り口、社会風刺的な物語、予測不可能な展開などに言及した記事も多かった。
さらにホアキン・フェニックス主演の『ジョーカー』や、ジョーダン・ピール監督の『アス』、イ・チャンドンが村上春樹の短篇を映画化した『バーニング』といった話題作にからめ、富裕層と貧困層、持つ者と持たざる者の分断や、格差社会といったテーマを鮮やかな語り口で描き出した、というような論評などが多く見られた。抑圧された者の視点から描いた物語が国を問わず生まれているというところが、まさに今の時代の空気なのかもしれない。
そうした論調の中で、昨年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを獲得した是枝裕和監督の『万引き家族』も合わせて言及する評論もあった。
昨年のコンペティション部門で審査員長を務めた女優のケイト・ブランシェットは、閉会式で「今回の映画祭はインビジブル・ピープル(見えない人々)に光を与えた映画が多かった」と講評を行っていた。そう評された『万引き家族』と同様、『パラサイト 半地下の家族』もそうした視点を持つ映画だった。
「見えない人々」に光を与えた
是枝監督は、「確かに『万引き家族』で僕が描こうとしたのも普段私たちが生活していると、見えないか、見ないふりをするような“家族”の姿だ。その生活と感情のディテールを可視化しようとする試みが今回の僕の脚本の、そして演出の柱だった」と公式サイトにつづっている。
今年の7月に韓国で、ポン・ジュノ監督と是枝裕和監督との対談の収録を取材する機会があった。両者はすでにいろいろな映画祭で面識があるそうで、対談は非常に和やかな雰囲気で進められた。そしてその収録の合間に、2人に両作の共通点について聞いている。
ポン・ジュノ監督は、『万引き家族』のパルムドール獲得の報せを聞いたのはまさに『パラサイト 半地下の家族』のクランクイン直後だったといい、「是枝監督が『万引き家族』でパルムドールを受賞したと聞いたときは本当にうれしかったが、撮影中だったんでお祝いできなかった。撮影は昨年9月に終わったが、そのときに樹木希林さんの訃報を聞いた。『万引き家族』を観たのは撮影が終わった後でした」と振り返った。
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