人生に大きな影響を与えた第二の事件
この時期、竹井の人生にとって大きな影響を与える事件が再び起きることになる。
なんと、竹井の妹が自殺をしたのだ。人一倍、社会を良くしたい、何かやりたいという想いがあった妹が、何かしようとするけど、社会に馴染めず、自分の能力不足にも悩んでいた。結果、精神的に追い詰められ、鬱に近い状況になり、最後は自殺してしまったのだ。
日本では、毎年約3万人が自殺。一人家族がなくなると、家族みんなが不幸になる。両親は自分を責め続け、こんな思いをする人を増やしてはいけないと竹井は強く思うようになる。
「世の中はだんだん悪い方向に行っているのではないか、こんな世の中をどうにかしなければと」悶々とする日々が続いたという。
そのような状況の中で、徐々に仕事にも慣れ、営業の何かがわかりかけてきた頃、以前からの知り合いで東北イノベーションキャピタルの社長から、東北に戻って一緒に仕事をしないかという誘いを受けた。この会社でやっていることはビジネスの創造を通じて東北を元気にすることだった。
まさに長年暖めてきた自らの思いを実現するまたとないチャンスだったのである。竹井は愛知県の会社に自分なりの恩返しをして整理をつけ、東北に戻ることにした。
東北イノベーションキャピタルには2007年10月に入社した。ベンチャーキャピタルという仕事を通じて竹井は様々なことを学んだ。経営のイロハ、ビジネスにおけるお金の意味。東北の起業家の現状、そして地方都市におけるベンチャーキャピタルの限界。東北には株式市場への上場が見込める企業や、他社への売却が見込める投資案件が少ないのである。既存のモデルが機能しないのであれば、ビジネスモデルを変えないといけないと思っていた矢先、東日本大震災が起きたのだ。
▼田久保の視点
キャリアを変えることを考えるとき、現在の会社への恩義を必要に感じたり、周りの人との関係が良いからという理由で躊躇する人は多い。もちろんこれは大切なことだが、単にチャレンジしない言い訳になっていることも多いように思う。自分は何がしたいのか、何のために生きているのかを深く認識していることが極めて重要だ。
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