自分の価値観をつくった二つの出来事
子供の頃から興味を持った分野(生命科学)の研究をしていた竹井だったが、その後の生き方を決める大きな要素の一つとなる事件が、遠い異国の地で起きる。
それは、2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件である。ある人間の陰謀に巻き込まれ多数の人が亡くなっていった。当時、大学院生だった竹井は、誰かに巻き込まれ死ぬのはいやだと思った。自分の人生は自分で決めたい。自立して生きていきたい、生きる力を身につけたいと猛烈に思うようになった。
それには経済的自立が必用であったが、大学に所属する研究者は研究費を国などに依存し、政策動向に左右されるため、全く自立した存在とは思えなかった。
もう一つも悲しい出来事だ。当時、日本は不況のまっただ中で、経済的に行き詰まった家族の一家心中などのニュースが頻繁にテレビで取り上げられていたという。竹井は人間が楽しくささやかに生きるというだけでも、ある程度の「経済力」と言うものが必要なのだということを強く意識するようになった。
子供の頃から、正義感が強く、いじめられている弱い立場に置かれた友達を見ると助けに走るような性格だった竹井。一家心中や経済的な問題で不幸になる人の話を見るために、こんな不条理なことがあって良いのか、自分の力で何とかしたいと、漠然と思うようになったという。
そして、日本を、まずは自分が通う大学が存在する東北(東京に比べると圧倒的に力の弱い)を良くしてきたいと思うようになっていった。
▼田久保の視点
ある事件、ある映画、ある本が人生を変えるきっかけになったという話をする人は少なくない。そのような人々に共通することは、その事象と真剣に、そして深く向き合っているという事実である。同じことを目にしても、しっかりと向き合いきらなければ得られるものは少ないだろう。
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