第3回 一般社団法人 MAKOTO代表理事・竹井智宏 志の醸成

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MAKOTOの設立と現在の活動

元々正義感が強く、弱い立場の人間を支援することに興味を持ち続けていた竹井は、発起人の一人として被災地復興ファンドおよびICT復興支援国際会議のプロジェクトを立上げ、復興支援に尽力した。
しかし、会社と掛け持ちでの活動に限界を感じ、ベンチャーキャピタルを辞め、被災者、被災地支援を行う団体であるMAKOTOを立ち上げたのだ。

震災の被害はあまりにも大きく、経済的にひっ迫する人が膨大な数に上ることが明らかだった。そんな状況下で、自殺者が増えるような状況にしてはならない。東北をなんとかしなければならないと決心したのだ。活動が軌道になるまでは、ほぼ無給に近い状態で夜も昼もなく働いたという。

震災起こってから約2年。竹井は今でも、被災地復興のためにほとんど休みもなく働き続けている。最初は被災地の役に立つことなら何でもやろうと、様々なことに手を出した。しかし、複雑な状況が絡み合う中で、うまくいくものも、行かないものも当然のように出てきた。最初に集まったメンバーとの決別も経験したという。

紆余曲折ありながら、現在のMAKOTOの現在の事業の柱は、東北最大のコワーキングスペースのcocolin(http://cocolin.jp/)とチャレンジスター(http://www.challengestar.jp/)というクラウドファンディングの仕組みの二つに集約できる。コワーキングスペースには東北の復興のために活動している若き起業家などが集っており、一つの復興拠点となっている。

そのMAKOTOのミッション・使命とはこうだ。

<MAKOTOのミッション・使命>
 資本主義が発展し、人類はかつてない繁栄を得たが歪みも顕在化している。
例えば、金が遠因となり人が自ら命を断ち、家族が絆を失い、隣人がいがみ合うような事が存在する。私たちはそのような世の中を決して望んではいない。
 今こそ、人間が人間として大切にされ、ささやかな幸せを享受できるように、世の中を作り変えていきたい。誰もが自分たちの暮らしを守ることができ、温かい家族がいて、身近な人を大切にする、 人間性と笑顔があふれる社会を作って行きたい。
 私たちは、そのような社会を実現するために何ができるかを常に考え、全身全霊を捧げていくことを誓う。私たち自らが「志」を燃やして行動し、さらに失敗を恐れず「志」を持って立ち上がる人々の助けとなることによって、今ここから次の時代の土台を作る。それが私たちMAKOTOの使命である。

今後のビジョンについて竹井はこう語る。
 「今後、やらなければならないことは、クラウドインキュベーションの実現です。これは私の造語ですが、広く浅く、サポートを色々なところから集めようという仕組みです。起業家を育てる際、これまでのように特定の指導者の能力に依存するのではなく、クラウド的に衆智を集め多様な人の力を少しづつ借りるのです。
 インターネットが発達し、人々が社会性を求めている現代だからこそ実現できる仕組みだと考えています。都会には、自分の仕事にやりがいを見いだせていない人が多く、自己実現の場を探している人も多いと感じます。社会をより良くしようという起業家を支援する事がやりがいに繋がります。頼り頼られる関係は人間が人間らしく生きるために凄く大事です。この地球を人間がより幸せに生きられる社会とするために、必用な仕組みを作っていきます」

▼田久保の視点
自分がやりたかった仕事に就いた後でも、その仕事の有効性などに対して正面から問いを投げかけるというのはなかなかできることではない。何事に対しても、素直な心でゼロベースで思考することは本当に大切だ。

短期間に何度も職を変えている竹井の人生。一見するとジョブ・ホッパーのようにも見えるが、日本を、ビジネスを通じて東北を良くしたいという一貫した志の中で、手段を変えながら進化を遂げているように私には感じられる。
 竹井の志が、活動が東北の復興を支える大きな柱になっていってくれることを心から応援したい。

田久保 善彦 グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長

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田久保 善彦 / Takubo Yoshihiko

慶應義塾大学理工学部卒業、学士(工学)、修士(工学)、博士(学術)。スイスIMD PEDコース修了。株式会社三菱総合研究所を経て、現在グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長。経済同友会幹事、上場企業およびベンチャー企業外取締役等も務める。著書に『ビジネス数字力を鍛える』『社内を動かす力』(ダイヤモンド社)、共著に『志を育てる』、『グロービス流 キャリアをつくる技術と戦略』、『27歳からのMBA グロービス流ビジネス基礎力10』(東洋経済新報社)等、多数。

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