「知的・精神障害者」の知られざる働き方の実態 3つの事例から見る労働問題の「一断面」とは

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同センターA型の指導員は現在14人。指導員の力量が、利用者(障害者)の伸び幅になるという。経験豊富な指導員は、障害者との信頼関係を作るところから始める。「障害者は十人十色、百人百様。指導や対応は一律に決まったものはない」(髙森理事長)が、指導員らの共通認識だ。障害者の実情や実態を心得ることなく、1つの型にはめる指導は否定している。障害者からすると、刷り込まれた作業や間違った指導はすぐには抜けないのだという。

髙森理事長は「さまざまな特性があり、私の観察によるものでしかない」と前置きし、精神障害者の働き方について説明する。

「繊細な方が多く見受けられ、とくに自分に向けられる周囲の言動や雰囲気には非常に敏感。丁寧な対応と説明がないと、不安になることもあるようだ。発達障害と知的障害の重複の方は仕事や人間関係などに疑問を述べることが多く、少なくとも1週間に1回は面談を実施し、不満を話してもらう。安心して働いてもらえるように、われわれも気をつけている」

少数派の働き方を知る必要

紹介した3社の事例に共通しているのは、いずれもが経営者や役員、社員が障害者雇用に前々から関心を持ち、受け入れる意識が職場に浸透していたことだ。そのうえで障害者が働きやすい環境を段階的に整備してきた経緯がある。

しかも、障害者の家族や施設の支援者たちが企業で働くことに理解が深く、経営者や役員らと念入りな話し合いを長きにわたり続けている。筆者が取材を通じて観察していると、ここまできめ細かな支援態勢が出来上がっている職場は少ない。ある意味で、相当に恵まれた環境とも言えるのかもしれない。

「障害者雇用が過去最多」といった言葉の前で思考を停止することなく、さらに踏み込んで、少数派の働き方の実態を明らかにする必要があるのではないかと思えた。

吉田 典史 ジャーナリスト

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よしだ のりふみ / Norihumi Yoshida

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』(ダイヤモンド社)など多数。

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