巨人で「3軍」常連の男が野球に見つけた生き方 24歳で戦力外通告、女子野球新チーム監督に
しかし、そんなときに大きなアクシデントが高橋を襲った。
試合で盗塁に成功したとき、左ひざの前十字じん帯を痛めてしまったのだ。
「すごい音がして、メリメリって。本当に終わったと思った。あの時」
足で生き残ると決めた男が、再起すら危ぶまれるような大ケガを足に負ってしまった。
精神的にも不安定になった高橋を支えたのは、志桜里さんの前向きな言葉だった。
「どんな時でも、あなたを応援していますよ」
そんなLINEの言葉に励まされた高橋はリハビリに取り組み、シーズン中の復帰を果たす。そのオフ、高橋は志桜里さんにプロポ―ズした。
結婚1年目となる2016年のシーズン、高橋はキャリア最高の成績を残した。3軍で40盗塁を決め、その成功率はなんと9割以上。
代走のスペシャリストとして1軍の座を獲得した先輩に弟子入りして、選手としての意識、みがくべき感覚を教わった。そうした内面に加え、オフ、自主トレで一緒に体幹トレーニングなどを積んだ成果が出たのだ。2017年のシーズンも3軍で30盗塁を決めた。
しかし、きっちり結果を残したにもかかわらず、1軍はおろか、2軍でプレーする機会もなかった。この年のオフ、チームから戦力外通告を受ける。
1度目のトライアウトは不完全燃焼
高橋はトライアウトを受けることを決めた。
「どこもケガしていないし、まだ出来るし、まだ24歳だし」
上のチームに昇格する同僚を横目に3軍で生き残りをかけているとき、夫人の妊娠がわかった。
「この子が妻のお腹にいるから、僕もがんばりました。子どものために頑張れ、って言ってノックしてくれたコーチもいました。この子が成長するとともに、僕も成長しないといけない」
戦力外通告をうけたとき、長男・浬(かいり)くんは生後8カ月だった。
「お父さんは野球選手だって言えるくらいまでは、プロとしてやっていたい」
妻も、そんな夫を後押ししてくれた。
「これからも変わらず支えていくつもりだから。一緒に戦うつもりでいるよ」
広島で行われたトライアウト。スタンドには夫人と長男がいたが、その前で結果を残すことはできなかった。1本はヒットを打ったが、他の3打席は凡退。代走を志願して、盗塁をひとつ決めたが、トライアウトのあと、NPBからの連絡はなかった。
「もっと、やれると思っていました。不完全燃焼でしたね」