「2019年に刺さったCM」に見るヒットの共通点 消費者の心を動かすアイデアとは何か?
花王『アタックZERO』は、松坂桃李、菅田将暉、賀来賢人、間宮祥太朗、杉野遥亮が洗濯好きの社会人サークル“#洗濯愛してる会”のメンバーを演じるシリーズCMを4月1日から放送した。CMは彼らが商品の洗浄力の効果を検証する姿や、新しい形状のボトルの使い方を試す様子を描く内容で、主婦層を中心に圧倒的な支持を獲得。同社ブランドとして初のトップ10入りを果たした。
東京ガス『ずっとも電気』は、深田恭子がアニメ『うる星やつら』の“ラムちゃん”、寺田心が“テンちゃん”に扮するCMで多くの支持を集めた。30代から50代を中心に票を伸ばし、前年度の3倍を超えるCM好感度を獲得した。
ガンホー・オンライン・エンターテイメント『パズル&ドラゴンズ』は、嵐が自身の楽曲『NOW or NEVER』に合わせてドロップの動きなどをモチーフにしたダンスをするCMが、2017年の放送開始から継続して好評価を獲得。嵐のグループとしての活動休止前のラストイヤーに向け、さらに注目を集めそうだ。
ランキングとは別に、優れたCM展開で業績の向上に貢献した「消費者を動かしたCM展開 10選」では、CM好感度上位ブランドの中でもとくに「時代性」「話題性」「影響力」といった観点に優れたCM展開として、10銘柄を選出した。
花王とゼスプリのCM、成功ポイントとは?
今回はその代表として、2つのブランドを紹介したい。
『アタックZERO』は花王が10年以上かけて独自に研究開発した洗浄基剤「バイオIOS」を主成分とする衣料用濃縮液体洗剤だ。環境や消費者のライフスタイルの変化を受け、これまでの『アタック』ブランドをまったく新しく生まれ変わらせるというミッションのもと、“アタック液体史上最高の洗浄力”を誇る新時代の洗剤として2019年4月1日に発売された。
個性の異なる5人の俳優を起用し、“洗濯愛”をコミカルに表現するCMがヒット。本年度にCMを開始した2459商品のうち最も高いCM好感度を獲得したほか、CM好感要因の「商品にひかれた」では総合1位を記録した。広告の反響は大きく、発売30年を超えたアタックブランドの若返りと使用拡大に寄与し、発売から7カ月で6300万本(インテージSRIデータ 本体換算)の出荷を達成した。
花王株式会社のコンシューマープロダクツ部門 ファブリックケア事業部 ブランドマネジャー 野村由紀氏は「次の30年もトップブランドであり続けるためには、格段に新しい洗剤ができたことを伝え、垂直立ち上げしなくてはならなかった。使い古された表現では誰も振り向かないと思った」と振り返る。
そうした考えのもと、“振り向かせるクリエイティブ”と“かつてない接触頻度”を軸にコミュニケーション戦略を立てた。イケメン5人が登場する洗剤のCMはこれまでになく、彼らが楽しげに語ることで“聞く耳を持ってもらうCM表現”になると考えたという。
また、テレビに加え渋谷109のシリンダー広告などの屋外広告や、大規模な店頭でのプロモーションといったあらゆる場所での接点づくりを徹底し、商品のコアターゲットに設定した主婦の入り口でもあるミレニアル層のみならず、洗剤に関心の低い人々にまで楽しんでもらえるようコミュニケーションを設計したという。
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