「信念のない言葉」は周囲の人に必ずバレている あなたの言葉で人が動かないのはワケがある

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「先に自分からギブをして、テイクがいくつか取れたら御の字。世の中には本当に悪い人は、そうはいないので、上司が部下を本気で信じて初めて、相手の信頼も得られるだろう」

と楽観的に考えています。

「信頼するから実績が出る」

『貞観政要』でも、上の者と下の者が互いに疑い合うと、国は治まらないと説いています。

「上の人が下の人を信用しないのは、下には信用できる人がいないと思うからです。下を信用できないのは、上の人に疑いの気持ちがあるからです。礼記【らいき】(儒家の経書)に『上の人が疑えば人民は迷い、下の人の心がわからないと、君主は苦労する』と書かれてあります。このように、上の者と下の者が互いに疑い合っていると、国を良くすることはできません」
(巻第七 論礼楽第二十九 第九章)

また、魏徴は、太宗にこうも述べています。

「蓋【けだ】し之を信ずれば、則ち信ず可【べ】からざる者無し。之を疑へば、則ち信ず可き者無し」
(巻第七 論礼楽第二十九 第九章)

信用すれば信じてもらえるし、疑えば誰も信用してくれない、ということです。

『座右の書『貞観政要』』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

部下を信用しない上司は、部下からも信用されません。上司を信用できないと感じた部下が、上司に対して誠実に振る舞うことはありません。

「職場や上司の信頼を得たいなら、信頼されるだけの実績を上げてからモノをいえ」と考える人もいますが、その考えは違うのではないかと僕は思います。

「おまえのことを信頼して任せるから、実績を上げてほしい」と伝えるのが正しいのではないでしょうか。

部下が自分のことを信頼してくれているから、自分も部下を信頼するのではありません。順番が逆です。上司が部下を信頼するから、部下は上司を信頼してくれるのです。

この秩序の感覚はリーダーにとって、とても大切なセンスだと僕は思っています。

出口 治明 立命館アジア太平洋大学(APU)学長

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でぐち はるあき / Haruaki Deguchi

1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業後、日本生命保険相互会社入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2005年に同社を退職。2008年にライフネット生命を開業。2017年に代表取締役会長を退任後、2018年1月より現職。『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『人類5000年史Ⅰ』(ちくま新書)、『「全世界史」講義Ⅰ、Ⅱ』(新潮社)、『仕事に効く教養としての「世界史」Ⅰ、Ⅱ』(祥伝社)、『本の「使い方」1万冊を血肉にした方法』(角川oneテーマ)、『教養は児童書で学べ』(光文社新書)、『ゼロから学ぶ「日本史」講義Ⅰ』(文藝春秋)など著書多数。

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