仕事の満足度を決める7つの絶対外せない要素 5万人調査から判明!満足度が高い仕事TOP5

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他方で、満足度が低い職業にランクインしたのは、倉庫ピッキング、レジ打ち、工場での単純作業などでした。これらの仕事が決して悪いわけではないものの、やはり「自分の働きが他人にどう貢献しているのか?」が見えにくいところが共通しています。倉庫や工場での作業は自分の行為で他人が喜ぶ姿を想像しづらく、そのぶんだけ私たちの幸福度は下がってしまうのです。

このポイントを、専門的には「タスク重要性」と呼びます。「その仕事がどれぐらい他人の生活に影響を与えられるか?」を示した概念です。

「ヘルパーズハイ」を目指せる仕事を選べ!

「人のためになることをせよ」とはいかにもキレイごとのようですが、多くのデータが貢献のメリットを支持しているのは事実です。

あるリサーチでは、ボランティア活動を行う人ほどうつ病の発症率が低い事実が確認され、また別の実験では「他人への小さな親切」を1日5回ずつ6週間ほど続けた被験者にも大きな幸福感の向上が認められました。

その意味で「貢献」の考え方とは、「科学的に正しいキレイごと」だといえます。さほどまでに社会への貢献が大事なのは、他者への親切によって人間が持つ3つの欲求が満たされるからです。

自尊心:他人の役に立ったことにより、「自分は有能な人間なのだ」との感覚が生まれる
親密感:親切のおかげで他人と近くなった気分になり、孤独感から逃れやすくなる
自律性:「他人のためになった」という感覚が、「誰から指示されたわけではなく、自分で自分の幸せを選択できた」との気持ちにつながる

これらの欲求は人間が幸せを感じるためには欠かせず、うまく満たせない限り仕事へのやりがいは生まれません。脳科学の研究でもこの事実は認められており、社会に役立つ行為をした直後には、頭のなかにドーパミンがあふれ出すことがわかっています。

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これは「やる気ホルモン」として知られる神経伝達物質の一種で、多くの違法ドラッグで快楽が得られるのも一時的に脳内にドーパミンが増えるからです。そのため一部の学者などは、親切による幸福度アップの効果を「ヘルパーズ・ハイ」と呼んでいます。わざわざドラッグの力など借りずとも、私たちは社会への貢献で十分ハイになれる、というわけです。

もちろん、違法な職業を除けば、他人のためにならない仕事など世の中に存在しません。倉庫ピッキングも世界に必要な物質をまわす行為の一部ですし、レジ打ちがいなければ経済は成り立たないでしょう。

が、ここで大事なのは、あくまで「自分の行為が他人の役に立った」事実を可視化しやすいかどうかであり、その点ではエンドユーザーとの触れ合いが多い仕事や、クライアントと直にやり取りできる職業のほうが有利なのは間違いありません。適職を探す際は、ぜひ「貢献」の視点を取り入れてみてください。

鈴木 祐 サイエンスライター

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すずき ゆう / Yu Suzuki

1976年生まれ、慶應義塾大学SFC卒業後、出版社勤務を経て独立。10万本の科学論文の読破と600人を超える海外の学者や専門医へのインタビューを重ねながら、現在はヘルスケアや生産性向上をテーマとした書籍や雑誌の執筆を手がける。自身のブログ「パレオな男」で心理、健康、科学に関する最新の知見を紹介し続け、月間250万PVを達成。近年はヘルスケア企業などを中心に、科学的なエビデンスの見分け方などを伝える講演なども行っている。著書に『最高の体調』(クロスメディア・パブリッシング)、『ヤバい集中力』(SBクリエイティブ)他多数。

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