井上尚弥が「2028年に現役引退」を宣言する理由

日本最高のボクサーが語る「理想の引退」

ボクシングホリック(中毒)という言葉がある。辞めては、またボクシングをやりたくなり、打たれても、血みどろになって敗れて、その夜はもう辞めると決断しても、朝になるとまたジムへ行きたくなる。ボクシングの魅力にどっぷりとはまり込み、ボクシングから離れられなくなるボクサーのことだ。

パッキャオも2度、引退を表明して撤回した。パッキャオの場合、ビッグマネーが動くボクシングビジネスが絡んでいて、個人の意思だけで進退を決めることができる単純な問題ではなかったのかもしれないが、彼もボクシングホリックの1人なのかもしれない。

元WBC世界バンタム級王者の辰吉丈一郎さんも、今なお現役を表明されている。本当の胸の内を聞いてみたい気もするが、プライドと意地が、引退という2文字をかたくなに拒否しているのだろう。

「心底、ボクシングを愛している」

子どもの頃は、父から「もう辞めろ!」と何度か、本気で突き放されたことがある。小学3年のときは、僕のやる気のない素振りに父が本気でキレて、母に相談を持ちかけて、やっとのことボクシングの再開を許してもらった。でも1度として自分から「ボクシングを辞める」と言い出したことはない。考えたことすらない。

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心底、ボクシングを愛しているのだ。幼い頃は弟の拓真がいて、いとこの浩樹がいて、自分1人だけが、その輪から抜けることができないという環境もあった。

しかし、意外と引退を決めれば、さっと翌日に辞められる気もする。僕は35歳から先のことよりも、そこから逆算して、この10年間をどう過ごすか、ということを深く考えている。

終活は、残りの人生をポジティブにするという。

ボクシングの終活も、残り10年間を濃密で幸福な時間にしてくれる。年間3試合だとすれば、30試合。2試合なら残り20試合しかできない。そう考えると1試合も無駄にはできない。その準備段階の時間も含めて1試合もモチベーションの下がる試合はしたくないと思う。

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