井上尚弥が「他人との比較」をムダだと思う理由 「リング上のパフォーマンスがすべて」
他人に興味がない。テレビ局などから「誰か興味のある人はいますか?」「会いたい人がいれば対談企画をしたいのですが?」とオファーをいただく機会が少なくないが、失礼ながらすべての企画を断っている。何かを聞かれれば答えられるが、他人に興味がないので、対談方式の企画になってしまうと自分から聞くことが頭に浮かばないのだ。
昨年オフに、メジャーリーグで二刀流として大活躍をされたエンゼルスの大谷翔平選手とプロスポーツ大賞の表彰式で会う機会があった。控室で一緒になって、試合のことをいろいろと聞いてくれて、「今度、日本でもアメリカでも機会があれば試合を見に行きたいです」とも仰っていただいた。
「ぜひ見に来てくださいね!」
僕は、そう答えたが、野球をほとんど知らないため、こちらから質問を投げかけることはできなかった。同じ日本人として、メジャーリーグという世界のトップが集まる場所で、二刀流という誰も成し遂げていないことをやってのけた大谷選手は偉大だしリスペクトしている。だが、その大谷選手にさえ、僕の好奇心の針は動かなかった。相当なものだろう。
「他人と比較する必要はないんだよ」
僕は、そんな自分の性格が嫌いではない。子どもの頃からボクシングテクニックの部分、部分を参考にしている人はいるが、誰か特定の世界チャンピオンに熱を入れたわけでもなければ、目標にしたわけでもない。そういう僕のバックボーンも「他人に興味を持てない」性格形成につながったのかもしれない。
人は人。自分は自分。
「他人と比較する必要はないんだよ。他人をうらやむんじゃないよ」
それが父の教えだった。
ボクシングの書籍に付き物のハングリーな物語は僕には存在しない。父は、「人をうらやむな」と、口を酸っぱくして言っていたので、僕の子どもの頃の生活が、中流なのか、世の中のどこにあてはまるかにもまったく興味はない。ただ何不自由なく、幼少期から中学、高校、プロへ入るまでを過ごした。人生に苦労はしていない。好きなボクシングに専念できてきた。
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