井上尚弥が「2028年に現役引退」を宣言する理由 日本最高のボクサーが語る「理想の引退」
ボクシング人生のゴールは決めてある。
設定したのは35歳。4月10日生まれの僕は2028年の4月に35歳になる。その年で僕はグローブを吊るすことになる。
なぜ35歳か? 37歳、38歳では中途半端。キリのいいところで35歳に決めた。なにごとも感性、気分で決める僕らしい区切りの設定だ。その35歳のゴールから逆算すればボクシングへの取り組み方や姿勢も変わってくるだろう。言ってみればボクシングの終活。
引退を意識させた「父の言葉」
昨年のいつだったか。何かのタイミングで父が唐突にこんな話をしてきた。
「尚さ。オレ、30歳の手前で引退してほしいんだよ」
ボクシングは危険を伴うスポーツである。健康なまま、ダメージを負うことなく第二の人生に進んでほしいという親心がよくわかった。結婚して、長男の明波が生まれ、もう自分だけの人生ではなくなっている。そういう環境の変化も父に、そう言わしめたのかもしれない。しかも、昔のボクサーは選手寿命が短かった。
元WBC、WBA世界ミニマム級王者の大橋秀行会長は28歳で引退した。WBA世界ライトフライ級のベルトを13度守り、日本人最多の世界防衛記録を持つ具志堅用高さんは26歳。1971年生まれの父世代からすれば、名ボクサーのゴールは30歳の手前だったのだろう。
だが、現在は確実に選手寿命が延びている。目の治療の医療技術も上がっていて、網膜剥離ボクサーも昔のように即引退のルールではなくなり、スポーツ科学の進歩で、年齢を重ねても体力維持は可能になった。
元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者の内山高志さんは37歳まで現役だったし、世界再挑戦を目指しているジムの先輩である元3階級制覇王者の八重樫東さんも36歳、WBSSの決勝で対戦するノニト・ドネア(フィリピン)も37歳、6階級制覇王者のマニー・パッキャオ(フィリピン)は41歳で、今なお、現役の世界チャンピオンである。
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