カラオケのパセラで「歌わない人が6割」のワケ 業界の「汚い」「まずい」「不親切」を払拭した

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このママ会ニーズはまだまだ発掘の余地があると同社では見ているようだ。

2019年7月にオープンしたホテルパセラリビング東新宿でも5時間1万8000円などのママ会プランを用意している。リビング付きで、自宅のようにくつろげるというのが同ホテルのコンセプト。

ホテルが稼働しない昼間の時間帯を活用した時間貸しで、いわば1つの施設でホテル、レンタルスペースの2業態を展開するわけだ。周辺に「バリアン」などのホテルを有し、清掃業者のルートを活用できるなど、多角経営する同社だからこそ利益を見込むことができる事業といえるだろう。

「サムライ・ロック・レストラン」とは?

さて、今回訪ねたAKIBAマルチエンターテインメントにおいて、最近もっとも熱いスポットとなっているのが、7階のイベント・ライブスペース「パームス」だ。貸し切り運営するほか、現在は2つの団体の定期公演に貸し出している。

サムライ・ロック・レストランの公演。息づかいが感じられるほど間近で、トップアスリートの技を楽しめる(編集部撮影)

そのうちの1つが、毎週水曜日の夜に公演を行う「サムライ・ロック・レストラン」だ。

ここでは、元体操選手で跳び箱世界記録保持者である池谷直樹氏が率いるアクロバット・ミュージカル集団「サムライ・ロック・オーケストラ」(SRO)との、コラボ公演を開催。体操、バトンワーリング、ダンスなど各ジャンルのトップアスリートによる妙技を食事とともに楽しむことができる。

池谷氏がSROを立ち上げたのは、1つにはアスリートのセカンドキャリアの支援。また東日本震災を経験した日本を、パフォーマンスを通じて元気にしたいという強い思いがあった。定期的に公演を開催するサムライ・ロック・レストランにも期待をかけているという。

「海外ではシルク・ドゥ・ソレイユのようなアスリートのセカンドキャリアを応援するシステムがあるが、日本にはない。サムライ・ロック・レストランを通じてそうした文化を広げていきたい」と池谷氏(編集部撮影)

サムライ・ロック・レストランのために池谷氏が組み立てたプログラムは、もともとインバウンドを意識しているだけに、大太鼓の演奏や着物、殺陣をイメージしたパフォーマンスなど、和が強く感じられるものだ。

しかし、観客が参加できるゲームもあり、日本人にとっても新鮮な目で和を楽しめる公演となっている。何より、オリンピック選手級の技を、息づかいが感じられるほどの距離で味わうことができる。

取材日にはたまたま、ある企業による貸し切り公演が開催されていた。金融系の企業による、成績優秀者に対する報償食事会だとのこと。主催企業の担当者は「本当に元気が出るようなパフォーマンスで、社員も『もっと頑張ろう』という気持ちになれたと思う」と感想を述べていた。

価格はフード・ドリンク用のチケット付きで6500〜8000円。公演後にキャストがお姫様だっこをしてくれるプランも受け付けている。

同社はメイン事業であるカラオケが国内16店舗と、決して大手とは言えない。ビジネスモデルも突き詰めれば「顧客目線」と、いたって普通だ。しかし「女子会」「ママ会」などの新しいサービスで知名度を確保し、その知名度にふさわしいサービス品質を維持しているのが強みとなっている。多角運営企業ならでの柔軟性、人材育成制度にその秘密がありそうだ。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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