第10回 海外営業時間事情

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生活習慣や買い物文化に大いに影響される小売業の営業時間。お店を開けていれば売上を得られる可能性があるが、同様に人件費や電気代などの経費、事故などのリスクなども勘案して決定されるのが営業時間。
 同じ日本でも都市部と地方でずいぶん違ったりするけれど、文字通り国が異なれば条件は劇的に異なり、同じ看板を掲げていても営業時間は地域差が大きい。

シドニーの一般小売店の案内。手書きで、しかも表示が隠れて見えないのがオージー流

ご当地シドニーでは土日祝日は特別な日で、特に日曜日は神様が決めた安息日。
 事務職は月曜日から金曜日は7時~19時、土曜日は7時~12時30分までが定時として設定することが出来るが、それ以外は小売業も含めて割増の時間外手当をつけなければならない。
 つまり仕事をするのは業種を問わず普通は18時まで、市内のがんばる小売で19時まで。それ以降は事務所も店も閉まってしまう。
 お店も含めて皆が夕方までしか働かないなら、買い物は一体いつすればいいのか? 答えは当然仕事中。かくして生鮮食品の入ったスーパーの買い物袋が、弊社事務所には点在する。

そしてなぜかオーストラリアでは週に一度給料日という会社も多く、そういう会社は給料日が毎週木曜日だ。1週間ごとの給料を1週間ごとに使い切る、そんな江戸っ子気質のオージーを対象に、木曜日のみ21時まで商業施設が開いているショッピング・デイとなる。

当店の営業時間は平日が10時から19時で、木曜日はショッピング・デイということで21時閉店。日曜日は18時閉店である。
 紀伊國屋書店の国内外にたくさんある支店の中でも、屈指の営業時間の短さを誇る。ちなみに同じビルの他のテナントは日曜日が11時~17時なので、社内的に屈指の短さを誇りつつも、地元の人からは「日本の会社は働くのが好きだね」という不本意な扱いを受ける。

ドバイ店。恰幅のよい人がたくさん

夜更かし好きというのは東~東南アジア圏が顕著と思っていた。シンガポールでもタイでも真夜中に子連れの外食は普通。しかし、中東ドバイは格別である。
 ドバイ店に勤務していた頃のことである。元来イスラム圏は礼拝日の金曜日が休みであり、平日もオフィスアワーは朝7時ごろから11時ごろ、そして午後は4時ごろから8時ごろまでの2シフト制。そもそも日中は暑いので活動しないというのが、伝統的な生活習慣であった。
 しかしそこに西洋風の営業時間が加わって、朝から晩までひたすら営業時間が延びる始末。白人は開店と同時に朝からさわやかにご来店、日本人やインド人がそれに続き、日が沈む頃にアラビアン親子で本屋に来たりする。

先日、久しぶりの日本への一時帰国で、海外勤務者にとって24時間という驚異の営業時間を再認識。コンビニはもちろん、レストランに薬局に本屋でも24時間営業がある。
 日本は人口が多く、気候が良く、治安が良いという要素があるけれど、それでも母国が一番頑張っていると思う。
 海外にいても易きに流されず、負けずに頑張りたい。

山田 拓也 紀伊國屋書店シドニー店 支配人

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やまだ たくや / Yamada Takuya

紀伊國屋書店入社以来、シンガポール、ドバイ、シドニーで、英語、中国語、仏語、独語そしてアラビア語書籍の販売に携わり、インド、ウズベキスタン、エジプト、エチオピア、ケニア、シンガポール、ジンバブエ、スリランカ、タイ、中国、チュニジア、ドイツ、トルコ、ネパール、パキスタン、バングラディシュ、フィリピン、香港、マレーシア、ミャンマー、モロッコ、オーストラリア人等と働く。多様な価値観との接触が趣味の書店員

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